2006年10月3日火曜日

「ぶら下がり」

最近の新聞記事、政治面に、よく「ぶら下がり」という言葉が登場します。総理大臣と内閣記者会との立ち話のインタビューのこと。それを一日一回にするか二回にするかで揉めているようです。
「ぶら下がり」−−。なんて奇異な言葉でしょう。だれが何にぶら下がるの?カギカッコ付きとはいえ、新聞がこの変な"業界用語"を当然のように使っているのにはあきれます。
昔の記憶をたどれば、「ぶら下がり」とは、テレビ、ラジオが使っていた特殊用語。しかも稚拙な表現。
かつて総理番の記者と総理大臣が交わす会話は歩いているときだけ。もちろん新聞中心。そばにいる記者が質問し、それをあとで「番小屋」で各社の記者に教えたものでした。やがてテレビがジャーナリズムとして認められるようになった昭和40年代後半。総理サイドは時折テレビのインタビューに応じるようになりました。しかし、各社のマイクをごそっとだされることに違和感。そこで代表取材。例えばNHKがインタビュー。マイクは一本。そのマイクで拾った音声を、テレビ・ラジオ各社にその場で分岐配信。一本のマイクに各社がぶらさがったーー。そこから「ぶら下がり」という業界用語が生まれました。ぶら下がり方式とも呼びました。安易な発想から生み出された苦肉の策の"用語"です。その頃考案された取材方法の異称がいまも使われていることの驚き。単にインタビューといえばそれでいいのに。それとも今でも音声だけは「ぶら下がって」いるのでしょうか。テーブルの上には録音機がいっぱい並べてあるように見えるのですが・・・。
「ぶら下がり」−。美しい日本語ではありません。語感も含め。昔の用語が使われているのは懐かしくもあり、しかし、業界用語を押し付けられる読者、視聴者は悲しくもありーーではないでしょうか


“チェルノブイリ”異聞

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