8月8日、沖縄の翁長知事が亡くなった。9日の新聞のトップはその訃報を伝えるものだった。
9日の朝のテレビ。モーニングショー。朝8時からのそれを垣間見た限りでは約1時間にわたってスタジオで取り上げられ、出演者が口角泡を飛ばさんばかりに言い合っていたのは日本ボクシング連盟の山根会長の“不祥事”の事だった。
相撲協会の不祥事、日大アメフット部の、いや、日大に跋扈するあの“暴力団的”体質。
たしかにワイドショー的には事欠かない話題だと思う。
常に「正論」を吐いているワイドショー。9日のネタは翁長一色であるはずだ。
しかし、東京のテレビは翁長氏のことには全くのように触れない。
「テレビは死んだ」と机を叩いて怒った。
辺野古移設をめぐってかつて菅官房長官と対面した翁長氏は移設を言う菅に対して、こう言っていた。
「私は本土に行くときはパスポートが無ければ行けなかったのですよ。同じ国なのに」。
これに菅がどう反応したのかはテレビはもちろん新聞も伝えてくれてない。
無視したのか、なにかの言葉を口にしたのか。
僕が初めて持ったパオポートも沖縄に佐藤栄作に同行取材をするためだった。
入管のごときものがあり、米兵がチェックし、その脇には免税店のPXがあった。
施政権と言う名の下に“分断されていた”日本。
翁長氏が大きな集会に顔を見せ、「沖縄」について語ったのは病気がかなり進行している姿での6月23日の沖縄戦没者追悼式だった。
「私たちは、この悲惨な体験から戦争の愚かさ、命の尊さという教訓を学び、平和を希求する「沖縄のこころ」を大事に今日に生きています」と語り始めた。
そして式典では浦添中学3年生の相良倫子という3年生が「生きる」という自作の詩を語った。自分の言葉でまさに戦没者の霊に訴えるように。
「七十三年前、
私の愛する島が、死の島と化したあの日。
みんな、生きていたのだ。
私と何も変わらない、
懸命に生きる命だったのだ。
彼らの人生を、それぞれの未来を。
疑うことなく、思い描いていたんだ。
家族がいて、仲間がいて、恋人がいた。
仕事があった。生きがいがあった。
日々の小さな幸せを喜んだ。手をとり合って生きてきた、私と同じ、人間だった。
それなのに。
壊されて、奪われた。
生きた時代が違う。ただ、それだけで。
無辜(むこ)の命を。あたり前に生きていた、あの日々を。
私の命が鳴っている。
過去と現在、未来の共鳴。
鎮魂歌よ届け。悲しみの過去に。
命よ響け。生きゆく未来に。
私は今を、生きていく。」
彼女の声に、言葉に、表情に心が震えた。
もしかしたら、彼女の詩は翁長氏に向けての手向けの言葉、誓いになったのかもしれない。今となるとそんな気がする。
安倍は誰かが書いた紙から目をはなさずただ読み上げていた。
今朝、TBSのサンデーモーニングという番組を観た。
沖縄について、翁長氏について語られていた。
翁長氏はイデオロギーでは無いアイデンティティーだと国に対する心中を語っていたという事。
「沖縄のこころ」を訴えて来たという事。
安保条約がある以上、基地の問題からは逃れられない。だとすれば国土の0.6%に70%の基地がある。その現状を打破しなければ。
内閣官房参与の岡本行夫も含めての“静かな環境”の中で静かに、しかし当然すぎる結論だった。
TBSはかつて「オウム真理教事件」の時、坂本弁護士を取材したテープをオウムに見せた局だ。
取材テープは絶対見せないという放送倫理を破って。テープを見せたことが坂本弁護士一家殺害の要因の一つにもなっている。
ニュース23で筑紫哲也は「きょうでTBSは死にました」と言った。
少しだけ“生き返る」ような努力をしているようにも思えた。
テレビよ死なないでくれよ。僕の半生はそこにあったのだから。
2018年8月12日日曜日
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