戦後しばらくして、日本が高度経済成長期を謳歌していた頃、第一次「交通戦争」という言葉が飛び交った。
日本は車社会と化し、交通事故が激増した。その犠牲者が日清戦争時の日本側の死者の数を超えたことから「交通戦争」と世相が名付けられた。
おそらくマスコミの作語だったような気もする。
交通遺児のための「あしなが育英会」が作られ、街頭募金も行われていた。
1980年代、交通事故の死者数が年間に1万人を超えた。事故は多発し、第二次交通戦争といわれた。
車のメーカーはこぞって新しい車を開発し、これでもかこれでもかと車を売りつけ、車の数は増え、それに比例する様に事故も増えて行った。車の増加に道路整備が追いつかない。
通学路のような狭い道を抜け道として利用する人が多発。車両進入禁止や通学路に侵入する車にテレビカメラが取材を試み、「あなたは違反してます」などと言おうものなら運転手から殴られるようなケースさえあった。
速さが求められていた時代背景をそこに感じた。
数年前の免許証更新時、教習所で耳を疑うような“講義”を聞かされた。
「ライトは常にハイビーム」で走れという道交法の改正があったとか。
愕然とした。
昔の交通マナーは「他人に迷惑をかけない」という趣旨があった。
信号で停車した時にはライトはいわゆるスモールにし、前の車が眩しくないように、対向車が眩しくないようにしてきた。身に沁み込んだマナーだ。
スモールとは車幅燈だ。
それが「違う」という。上向きにしていれば防げた交通事故が多いからだと「お上」は言う。果たしてそうだろうか。
車は飛躍的に進化し、ライトはLED使用。対向車のライトが眩しく、「目くらまし」状態になることもしばしば。停車中も後ろの車のライトが眩しい。
眩しく事故を起こしたという話も聞く。
眩しければ目をつむる。人間の当然の「生体反応」だ。
車をより「狂暴化」させている。ライトの仕様も暴力的、威圧的だ。
識者は言う。「眩しい時は左側に目をやりなさい」。愚答だ。左に注意を向けると右を見ることがおろそかになり危険でもある。
今は、もしかしたら「第三次交通戦争の時代」かもしれない。
いわゆる「あおり運転」、「威嚇運転」が日常茶飯事の如く為されている。
蔓延する「暴力的運転」。威圧し他者の恐怖心を呼び起こす運転。
「ハンドルを握れば人が変わる」と言われている。
高級外車に乗ると優越感に浸る。そこのけそこのけ俺様が通る。
一時の流行病で終わることを祈る。
いま、この国は「暴力的空気」に支配されている。
政治の「暴力」とあおり運転は関係ない。しかし空気は伝播する。
京アニ事件もそうだ。ガソリン携行缶と言う言葉は愛知トリエンナーレ事件にも使われた。
京アニ事件の被害者や家族の心情を考えることもなく、それを「表現の自由」を非難し攻撃することに使う。
きのう煽られた。通学路で軽自動車に。駅前では公共交通機関のバスさえもあおりをやっている。
「あおりに気を付けてね」が日常生活で使われる悲しい現実。
どこか、いま問題の日韓関係にも似ているような・・・。
2019年8月23日金曜日
“チェルノブイリ”異聞
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