2020年2月26日水曜日

静かに進行している「パンデミクス」

先月か、「不条理」について書いた。
カミユの「ペスト」、そのエンディングにはこんなことが書かれている。
“リウー(主人公の医師)はこの町から立ち上る歓喜の叫び(ペストは終焉したという当局の声明を聞いての)を聞きながら、この歓喜が常に脅かされていることを思い出していた。というのも、彼はこの喜びに沸く群衆の知らないことを知っていたからだ。それは、様々な本の中で読めることだ。
ペスト菌は決して死ぬことも、消滅することもない。数十年間も、家具や布製品のなかで眠りながら生き残り、寝室や地下倉庫やトランクやハンカチや紙束の中で忍耐強く待ち続ける。そして、おそらくいつの日か、人間に不幸と教えをもたらすために、ペストはネズミたちを目覚めさせ、どこか幸福な町で死なせるために送りこむのである“。

カミユの「ペスト」は1947年に刊行されている。わずか70数年前にこんな「文学」があったということ。
現代の黙示録のような気がしてならない。

多分、同じ頃か、日本では結核菌が大流行していた。カラ咳をしている人は結核患者とされていた。近ずくなと大人から口を酸っぱくして言われた。結核菌は何処にいるのか何処からくるのかわからなかった。
結核患者への療法は「サナトリウム」というところに患者を隔離し、有効な治療薬はなかったはずだ。
いま、結核菌を持つ人は少ない。

これまで我々が知ってきた菌、ウイルス。インフルエンザがその代表だが、6つに菌に脅かされてきた。
そして7つ目が今回の「COVID-19」。新型ウイルス。

科学文明は進み、我々は便利で快適な生活を得るようになった。テレビのCMがそれを象徴している。しかし、生命体であるはずの「ウイルス」に対しては、その防御策や治療薬はまだ無い。AIによる豊かな生活とは無縁だ。

今度の「事件」」、数々の「わからないこと」が多すぎる。
“震源地”は本当に武漢なのか。カエルやヘビが感染源なのか。
ならば、なんで中国政府は化学工場を爆破するのか。

ダイヤモンド・プリンセスという豪華客船の怪。船籍や保有会社が最近やっとちょこっと伝えられる。船籍イギリス、所有者はアメリカ。

船長は船内の”録音・録画“を聞けば、どうやら日本人のよう。
船の中のことはすべて船長に権限があるとされてきた。
しかし、船長の「権限」はどれくらいあったのか。無いに等しい。

長期間にわたる船内での“隔離”。隔離は成功しなかった。蔓延に火をつけいるようだし、死者もでた。
大黒ふ頭に着岸後の検疫体制の不備。船内の“隔離体制”の不備。
下船は厚労省の指示待ちだという船長。

素人考えだが、すぐに全員下船させ、しかるべき隔離措置をとるべきだったのではないか。

メディアの特にテレビの問題。昼のワイドショーは何を考えているのか。
興味本位。その一言。それがテレビの存在意義か。
視聴者の不安をやたら煽ってはいないか。

感染と発症とは全く違う。しかし、テレビの扱いは感染、即発症。
もしかしたら、COVID-19はすでにして日本の中にも侵入していて、「仲間」の到来を待って、一斉蜂起したのかもしれないという”妄想“が湧く。
感染源の特定や感染経路の探索はもはや不可能。

いつ、どこに登場するかだれもわからない。
誰しもが「菌」の中にいるのかもしれない。

マスク(それはウイルス防御に役立つかどうかは別)の買占め屋が登場し、ネットで高値で売るという卑劣な輩がやはりいるということ。

消毒液も品切れ。これも買占めの対象か。

新型ウイルス事件が起きてから、これはつとめて「政治問題だ」と言ってきた。
しかし、政治は機能していたのか。していない。
今頃、なにやら指示を出す。

対策会議は政府だけ。学者など専門家は含まれていないようだ。
前日の専門家会議の提言は聞くに値するが、国の指針は遅きに失した。

肝心な「初動」が無意味であり、政治の「空白」が事を大きくした。
政治の要諦は「想像力」だ。想像力を働かせれば、先手、先手と手を打てたはず。

今日になって安部は「イベント中止」と言い出した。もう民間ではやっていること。
医療体制の構築、治療薬の開発。PCR検査も所管の保健所は逃げている。

国は、地方自治体に振る。保健所は医療機関に振る。
みんな責任回避だ。

原発事故の当時が浮かぶ。保健所に「ホールボディーカウンター」の検査に行けたのは、騒ぎがとりあえず一段落してから。

「お役所仕事」とは昔の人はよく言ったもんだ。

正しく知って正しく怖がろう、恐れよう。原発事故時に言われた“標語”。
どうやって正しく知るのか。国からの「情報開示」はなはだ心もとない。
正しく怖がっている。でも、どこへ行けばその不安は解消されるのか。

やはりあらゆることが、「不条理」にあり、我々は、その不条理にさいなまれている。

安部の野望だった東京五輪。五輪のことは夢のまた夢。中止するなら早いほうがいい。まともな関係者や選手には気の毒だが、諦念を持ってもらうのも政治の課題。ヘビの生殺しからの脱却。そうあるべきとも思うのだが。

新型ウイルスの蔓延は、今が盛りなのだ。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...