2020年3月11日水曜日

9年前と同じ「この国の姿」

今、新型コロナウイルス、COVID-19のまさに“パンデミクス”のような騒ぎに、日本はおろか全世界が慄いている。

今の社会構造は、原因は違うが、あの「3・11」の時と重なって見える。
それは、人間は、少なくとも10年前に起きた大惨事から何も学んでいないということ。
危機管理という問題から、目を逸らしてきたということ。
原発についていえば「事故は起こらない」という安全神話の中に身を置いてきたということ。

それを安全性バイアスと呼ぶかどうかはともかく、勝手に起こらないものとしてきた。原発事故は。
政府というものは、「調べない、知らせない、助けない」。そんな国の姿を9年間見続けてきた筈だが。
当時のこの国の姿はあまりにも異様であり、異形だった。

国は、常に“目くらまし”を図ってきた。それは今も続いている。
「復興五輪」とは何だ。その「イカサマ」に気付いているのは、事故の被害者である、強制避難の「罠」にはめられてしまった未だ6万人に上るという福島の「当事者」だけだ。

五輪のためについた「嘘」、アンダーコントロール。そのまやかしを気付かないふりをして、「聖火リレー」に血道を上げる一部の人。
端的な話、リレーのコースだけは整備され、除染も進められた。
一筋、裏側に入るとどうだ。「廃墟」という言葉しか浮かばない。
そして高線量地域がまだ存在しているということ。

廃炉の問題、汚染水の処理問題、崩壊された地域社会、家庭・・・。

アンダーコントロールというまやかしも、今度の「新型コロナ」ではNot under controlだ。

正しく知って正しく怖がろう。こんなセリフを何十回も聞かされた。
その「正しさ」が何を指すのかいまだもってわからない。

同じセリフを、「コロナ」でも聞かされている。テレビの向こうにいるタレント評論家、専門家という人たち。

「3・11」時も専門家が数多く登場した。登場させた。
そして、我々は“正しさ”が何か判らなくなり、右往左往し、デマに苛まれ、「一億総ヒステリー状態」の中に身を置いてきた。

曰く。
不要不急の外出は避ける。
外出時にはマスク必携。帽子必携。帰宅時には玄関先でコートをパタパタと払う・・・。町内会から貸し出された線量計で家の周囲を計測する。

そして生活の混乱。ペットボトルの水を求めての行列。
近くのスーパーから食料品は消えていた。
そしてガソリン不足。

1号機の爆発のテレビ映像に恐怖を覚えながら、生活の手段を考えていた。
あの日から数日間、どんな食事をしたか記憶が無い。

それが刊行されるかどうかは不明のまま、連載しているコラムの原稿を届けに行った。FAXもパソコンも使えなかったから。
慣れ親しんだ町はほとんど人はいなかった。どんよりとした空気に覆われていた。

デマのチェーンメールが送られてくる。もちろん“知り合い”からだ。
最初はデマと返信していたけど、労力がばかばかしくなり止めた。

やがてビッグパレットに富岡、川内の人たちが避難させられてきた。
何千人の「集団雑魚寝」。

あのころもし新型ウイルスが発生し、感染が拡大していたらどうなっていたのだろう。
あの時の光景に怯える。

そして2020年の今、放射能に変わりCOVIDO-19に人々は怯えている。
テレビは相変わらず「正しく知って正しく怖がろう」と言いながら、何が正しいのかの「解」は示せない。

おなじみの「風評被害」。それによる差別とイジメ。

当時は水が、ガソリンが無かった。放射能測定機器もなかなか手に入れにくかった。

今はマスク不足、トイレットペーパー、ティッシュペーパーの欠品。そして、医療体制。PCR検査機・・・。
もしかしたら、医療崩壊への危機。
高齢者の切り捨て。

今度のコロナウイルスの件、政権は事態を、当初は「甘く」見ていた。
拡大しないものとして。

官邸の危機管理。感染症の専門家はいなかった。結果厚労省に丸投げ。
「調べない、知らせない、助けない」の「論理」が働く。

そして、政治家は現場を知らない。現場主義の思考がない。
専門家も、“研究医師”だ。臨床医師が加わっていたのかどうか。
いわゆる刑事事件でも「初動捜査」が事件解決のカギを握る。
政治家はまずもって「初動」から間違えていた。
クルーズ船への長期拘留。患者を拡大させた原因の一つではないか。

武漢からのチャーター機での帰国。日本のホテルの中での滞留。
状況は大違いだ。

3・11時、政府は国民に知らせることをためらった。放射能を測定しても公開しなかった。

「危機管理」ということを政府はもっともっと真剣に考えるべきだ。
官僚機構や官邸官僚が的確な「民情」を上にあげないから、安倍の「独走」が世間を混乱させる。

原発事故当時の「非常事態宣言」はまだ解除されていない。理由はわからないが。そして「ウイルス」では「緊急事態宣言」。法に基づいた私権の制限も起こる。

だから、3・11は過去のことではない。そこから学ぶことを学ばなかった権力者の群れ。
そして、あまりにも似通った9年前と今。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...