2018年7月10日火曜日

「オウム」という暴力装置、そして、天災。

2018年7月6日、僕は朝の食事の後新聞を読んでいた。
テレビのニュース速報がオウムの浅原彰晃の死刑執行を伝え、その後、次々と死刑囚の刑執行を伝え始めた。
やがてNHKは執行に立ち会うため拘置所に入る検察官の姿を流している。
いわば同時進行のものなのだ。
執行は事前に当局からメディアに“リーク”されていたと気付く。

これまで死刑の執行は事後に法務省から発表されていた。発表では事件にもよるが“正式”に執行された死刑囚の名前は発表されなかった。
オフレコという名目でその名前が伝えられていた。

死刑とはある意味“国家による合法的殺人行為”だ。一日に7名。幸徳秋水らの大逆事件以来の出来事だ。

なぜ、この時期に一斉に。
そのことを考え続けた。それに意味づける論理は見つからない。
「元号が変わるまでに」という理由がまことしやかに言われているがそれだけなのか。
再審請求をしていた被告もいる。死刑であの事件は「過去の出来事」となり、解明されないことが残る。
オウムは常に「闇」だ。

テレビは朝から、昨夜来の記録的豪雨の被害を伝え続けていた。その中での速報。
二つの大ニュースにテレビも新聞も、そのニュースバリューをどう置くか苦吟したであろう。
死刑執行と言うことで一つの時代を終わらせたかったのか。

オウムに関するニュースはひとまず“話題”から消えた。豪雨は続いている。
死者の数も類例を見ない大災害は続いている・・・。

死刑執行には法相が判を押す。執行3日ほど前に。
以前、何人かの法相経験者に話をきいたことがある。

執行されると想像される時間、大臣室で、手を合せたと言う人もいた。
自分の判で死刑囚と雖も人の命が奪われることに悩んだ政治家もいた。

執行の前夜、翌日の執行を知っている上川陽子や安倍たちは「自民赤坂会」なる宴会を催していた。写真も撮っている。法相はピースのポーズすらとっている。
舞った解せない振る舞い。

集中豪雨の情報が続々と入っている中、首相や国会議員が宴会をやっている場合じゃ無い。いや異常なのだ。
政治家に総理大臣に必須の要素は「想像力」だ。明日への想像力だ。未来への想像力だ。
大水害の予想、それがこの国に及ぼすであろう被害への想像力。それを持ち合わせていれば宴会が出来るわけが無い。
すべがそのしのぎの場当たり的政治。そういう政治家の群。

これが今この国の姿だということを肝に銘じよう。

自民が言う「緊急事態宣言」にあたる大災害だ。
国の対応はあまりにもお粗末だ。

オウムのサリン事件があったのは1995年3月20日。その年の1月17日には阪神淡路大震災が起きている。

天災と人災の違いはあるが「暴力装置」が働いたのだ。
自我を捨てて、自我を喪失しオウムに走った若者たち。

この二つの出来事の前と後では日本人の意識の在り方が大きく変わってしまった。バブルが盛大にはじけ、行け行けどんどんの時代はほころびをみせていた。
冷戦構造が終了した。
日本という国家の在り方の根源が厳しく問われる時代にやってきた大事件だった。

2011年3月11日には東日本大震災が発生した。
原子力発電とい暴力装置が牙を剥いた。
天災と人災。
130人を超す大雨の犠牲者。濁流にのまれた街、人々の暮らし。

政治は無力なのだろう。国民の生命と財産を守ると言うその至上なる使命が機能してない。

濁流と闘い、取り戻せない日常を手にしたいとする被災者。政治に苦言をたれながらも日常の連続の中にいる我々。

彼我の差に何を語るべきなのか。
命を失った人に何を語るべきなのか。
無力だ。あくまでも無力だ。

オウムというカルト教団が、宗教団体が我々に突き付けた物は大きかった。
宗教とは何か。
オウム事件が我々に突き付けた物は、考えねばならないことは大きかった。
人類の歴史に中でも「宗教戦争」は存在した。
殉教や殺戮が繰り返されてきた。

「宗教」という根源的な物、それがもたらしたことに我々の思索はほとんど及んでいなかった。
オウムは単なる異様な殺人事件として扱われてきた。
物質的には豊かになって行く社会にあって、オウムはまさしく異様な存在であった。
その異様な社会に人はいとも簡単にのめり込んでいく。
それが「オウム」に対する一つの見方、判断だ。

裁判と言う司法の世界では「宗教」は正当な判断を下す材料では無かった。

記録的豪雨災害。甚大な被害。この後に何らかの爆破装置が起動しないことを祈る。       

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