黒い雨訴訟。ようやく裁判所が被害者の声に耳を傾けた。
被災者の全面勝訴。
気象庁の(当時)「線引き」が“黒い雨”の被害者を分けた。雨には区画の意識があるわけでもないのに。
こどもの頃、表に出ようとすると「黒い雨には気を付けろ」と祖母から口酸っぱくいわれた。戦後になっても黒い雨含め、原爆の“脅威”が残っていたからだろう。
若いころ読んだ井伏鱒二の「黒い雨」で、その“正体”を知った。黒い雨の正体よりも、それが引き起こした「差別」と「排除」に怒りを覚えた。
中学時代の思い出だ。
島崎藤村の「破戒」を読んだ。なぜ主人公の名前が瀬川丑松なのか。
いじめに合う生徒に、つい自分の出自を喋ってしまう。戒めを破る。結果、丑松も徹底した差別の渦に巻き込まれる。
「もしかしたら、自分は被差別部落の出身ではないか」と真剣に考えた。
「3・11」、原発事故。一部の福島県民は「放射能が移る」という”デマ“によって激しい差別に見舞われた。
放射線を理解しているはずの医療関係者、医者や看護師、突如職場を離脱していった。
1F構内の中心を起点に国が同心円で引いた線。その線が1軒の家の真ん中を通っているということで、母屋と離れは区別された。
黒い雨の降雨地域設定と同じようなことが。
福島県民は東京を車で走れなかった。
福島県産の食品は、海産物含めて、徹底的に「忌避」された。
まもなく、あの8月6日がやってくる。黒い雨を考えさせられる。
そして、「新型コロナ」。
政府に「重用」された医学者は、なんら「解決策」を持たなかった。
すべてが政治問題化され、令和の差別が横行している。
ステイホームを言う政府はGO TOトラベルキャンペーンで経済の回復を目指す。論理的矛盾を感じない政治。そこから東京は排除された。
“東京ナンバー”の車は何処にも行けない。かって福島ナンバーがそうであったような光景が反射光のように公然と行われている。
マスクをしていない人を激しく叱責する。政府の自粛要請下で地元以外のナンバーの車を傷つけたり時間を短縮して営業する店に嫌がらせをしたりする。中国人が経営する店やその関係者をSNS上で中傷する。
新型コロナウイルス禍に現れたいわゆる「マスク警察」「自粛警察」現象は、人間の攻撃性を顕在化させた。極端な差別の具現化。
「歪んだ正義」の出現である。社会が混乱すると登場する“正義仮面”。
ALS患者への“嘱託殺人”的行為。ちょっと前のやまゆり園大量殺人。
優生思想に捉われた“歪んだ正義”。
終わることを知らない「コロナ渦」のなかで、正義を語るには勇気がいる。
関東大震災後の「デマ」で何人が殺されたか。それは噂が噂を呼ぶという状況の中での出来事だったが。
我々は「SNS」という「大人のおもちゃ」を手に入れた。しかし、その中に書かれることは「大人」が為すことでは無い。
コロナの時代の道を歩んで行くことのいかに難しいか。
後期高齢者はうっかりマスクを外したままコンビニに入った。怖い目が刺さってきた。
はてさて、どう生きていくものか。
2020年8月3日月曜日
“チェルノブイリ”異聞
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