裏の田んぼに水が入り、どこからともなく鴨が来て水の中の餌をついばむ。
カエルの合唱が始まる。
先日、6面の、界隈のいくつかの田んぼで田植えが行われた。稲が植えられた。褐色の水面に若い緑が彩りを添える。
稲は瞬く間に育っていく。カエルの合唱も大きくなる。
大好きな待ちわびた光景、季節。
福島のコメを思う。
「3・11」前には福島のコメは出荷量で全国の上位を占めていた。
原発事故後、それは激減した。
品種改良も進み、「天のつぶ」という新銘柄米も生産されているにも関わらず、福島のコメの出荷量は減ったままだ。
作付面積を減らした農家もあれば、農地を“転売”した農家もある。
近所の農地も宅地転用された。そこには家が建った。帰還困難区域の人たちが数軒。町内の光景が変わっていく。
聞くところによると、その農家は
高齢になり、作業が辛くなった。後を継ぐ“若者”はいない。やむを得ない事情これありだと。
耕作放棄地となった田んぼもある。毎年、老夫婦がなにやら”口争い“をしながら田の手入れを行っていた。
今は、その”持ち主“の姿も見かけない。
福島県産のコメは「全袋検査」が今でも行われている。すべてがND,放射性物質未検出。
福島県産のコメはなかなか食卓にはあがらない。いまだに忌避されているようだ。
そのコメを忌避する人に限って、安全・安心を言う人にかぎって、コンビニなどで食品加工物を多分に含んだ食材を買っている。
健康に影響がある食品は加工物を含有しているものだと思うのだが。
福島県産と書かれたコメは売れない。
手前味噌のようだが福島のコメはまことに美味なのだ。
しかし、「美味さ」は「風評」にかなわないということか。
福島と言う名前は忌避され、他県のコメとブレンドされ「国内産」と表記されて売られている。
しかもその「消費先」は、いわゆる「外食産業」だ。
しかもその買い取り価格は大幅に低い。
福島のコメについて言えば、生産と消費のバランス、需給関係が壊れて行っている。
10年後、この国のコメ事情がどうなっているのか。推測に値することが可能な頭脳も知識も持ち合わせないが。
田んぼのある光景、カエルが泣く風情。10年前、ここに家を買った理由の一つだ。
贅沢な“初夏”を味わっている。
そこには光景としての「美しい国」があると思っているのだが。
安倍首相夫人が福島市にやってきた。福島市郊外の田んぼで、小林福島市長と田植えを“楽しんだ”ということだ。
まさか福島市の名誉市民とはならないと思うけれど。
豊葦原の瑞穂の国、子供の頃習った日本の別称。今騒がれているのは瑞穂小学校。
いやはやなんとも・・・。
2017年5月21日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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