安倍とオバマがそろってハワイでスピーチした。
ともに「平和を希求する」という思想のもとで。
双方ともに「美しい言葉」がちりばめられた、“感動的”でもあるスピーチだった。
彼らは「読み上げた」。書いたのはそれぞれが“抱える”スピーチライターだ。
彼らの「実語」ではない。
彼らの言葉に酔っている人たちがいるとすれば、それはライターの文章に酔っているのだ。
歌手のスマップが引退した。
スマップの歌に感動を貰い、励まされたと言う人はそれこそ星の数ほどいる。
でも、彼らの歌は、彼らは歌い手(上手いかどうかはともかく)であり、詩を書いた人は別人だ。
世界に一つだけの花・・・は槙原敬之だし、夜空ノムコウはスガシカオの作詞だ。
その詩が彼らのために、彼らの物として書かれたのであったとしてもだ。
ハワイのスピーチをテレビを通して見聞きし、そこにあった言葉の数々に「感想」を持った人も、それは「ライター」の文章に、ライターが彼らのために、彼らの言葉として書いたものに、ある人は感動し、ある人は批判しているに過ぎない。
安倍のスピーチを聞いていて、まず浮かんだのは「沖縄」だ。
“”この地で命を落とした人々の御霊に、ここから始まった戦いが奪った、すべての勇者たちの命に、戦争の犠牲となった、数知れぬ、無辜の民の魂に・・・“。まずは沖縄に向けて語られる言葉ではないか。
沖縄の米軍基地。それがあることゆえのこの国の終わらぬ戦後。なぜ、沖縄で語らぬのか。なぜ沖縄を語らぬのか。
”戦争の惨禍は、二度と、繰り返してはならない“。
しかし、実態はこの国は再び戦争の惨禍をつくりだそうとしてはいないか。
“戦い合った敵であっても、敬意を表する。憎しみ合った敵であっても、理解しようとする。
そこにあるのは、アメリカ国民の、寛容の心です”。
年末恒例のベートーベンの第九。その端緒を開いたのは坂東俘虜収容所の松江豊寿所長だ。薩長によって朝敵とされた会津藩士、斗南藩で辛酸をなめた父を持つ人。
松江豊寿は「寛容の心」をもってドイツ人捕虜に接したのだ。
第九の演奏を許したのだ。
“”戦争が終わり、日本が、見渡す限りの焼け野原、貧しさのどん底の中で苦しんでいた時、食べるもの、着るものを惜しみなく送ってくれたのは、米国であり、アメリカ国民でありました。
皆さんが送ってくれたセーターで、ミルクで、日本人は、未来へと、命をつなぐことができました“。
終戦直後のあの飢餓と貧困。それを救ってくれたのは進駐軍ではない。セーターももらった覚えは無い。
毎日、サツマイモを食べさせられていた。セーターは親や祖母の物を編み直したものだった。それは戦後しばらくしてからだ。
進駐軍の物で、「命をつないだ」記憶はさなきだに無い。
米兵がやったことは単に「関心をかう」という行為であり、アメリカの国策とはにわかに承服しがたい。
脱脂粉乳のミルクはたしかに給食にでた。DDTを頭から撒かれた・・・。
ハワイにいる安倍の念頭には、あの戦争で犠牲になった日本人のことは無いのかもしれない。
“寛容のこころがもたらした和解の力”というくだりもあった。
なぜ、沖縄に寛容の心をもって接し、沖縄県民と和解の努力をしないのか。
そう、僕は極東の小さな島国の、島国根性の抜けない一人なのかもしれない。
「日米同盟」というおざなりの、おもねるような言辞にはいつも不快感を覚える。
でも、待てよ。これらの言葉は「スピーチライター」がまさに“おもねる”ことを意識して書いた文章なのだ。と思えばいい。
安倍は単にそれを読んだに過ぎないのだ。と、思えばいい。
「ゴーストライター」、いっとき流行った言葉だ。ゴーストには“幽霊”という意味もある。
2016年12月28日水曜日
“チェルノブイリ”異聞
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