11月13日。パリで起きたテロ。たまたまテレビでそれを知り、テレビはその特番にでもなるかと思いきや通常のニュース扱いに過ぎず、その事実と現象だけが伝えられ、真相を窺い知る解説や識者の意見や見方などはほとんど無かった。
日本人に“犠牲者”が被害者がいないとわかるとその傾向は続いていた。
ISによる日本人二人の殺害時の、あのワイドショー的な(興味本位という意味で)情報の“氾濫”も無く、9・11時の時のような異様な雰囲気すらもなかった気がする。
テロが起きる前日、アメリカの空爆でISの“殺人犯”だとされるイギリス国籍を持つ「ジョー」が空爆で狙撃されたというニュースに接していた。
報復はあるなと感じていた。そしてあの事件。
テロと書いたがまさに戦争なのだ。
この事件を、戦争の発端をどう読み解けばいいのか全く分からなかった。多数の犠牲者を出したことへの悲しみと怒り。それを語れない、書けないと言うことの沈黙に支配されたここ数日。
未だ持って自分の中での思考の整理が出来ないのだ。
咄嗟の思考と想像力に中では、戦争への予感、ある意味での世界の終わり的な感覚に身体中が貫かれていたのだが。
報復の連鎖、憎しみの連鎖という言葉が新聞紙面には踊る。それとても。そうではあるのだが、どこか「ありきたり」の言葉のように思えてならなかったし。
どこか3・11の時に覚えた感覚とも似ているのかもしれない。犠牲者の視点でものを語るのか、国の視点で俯瞰してものを語るのか。
なぜこれは戦争だと書いたか。それは戦争は必ず無垢の市民を人々を犠牲にするということだ。武器を持った人同士の戦いでは決してないということだ。
だから3・11の時の思ったように、そこにあることを、そこから派生することをしっかり見なければならないということ。
テロとの戦いということは何かということを考え続け、あらゆることに想像力を働かせること。テロとの戦い、いや、テロそのものの中での本当の犠牲者は国民、市民、弱者であるということ。
なぜテロが起きるのかということも当然含めて。
沈黙は無関心に通じ、沈黙は差別にも通じる。原発事故と沖縄の現状からいつも思っていることだ。
しかし、視点を変えれば、このパリでの出来事はしばしの沈黙をも許されることではないかと思っている。
シャルリ・エブドのテロは言論の自由への挑戦と言う位置づけが出来た。今回の事件は・・・。
ISはじめ、今の中東・イスラム問題に対して声を上げねばならないと思う。西側先進国なるところの一員である限り、我々だって「当事者」の一員であるのかもしれないのだから。
しかし、どこに向かって、誰に対して声を上げればいいのか。その“わからなさ”が“沈黙”を選択させたのかもしれない。
トリコロールを掲げ、事件は愛国者を生む。戦争に向かってトリコロールが打ち振られるかもしれない。
フランスはある意味「多民族国家」だとも思う。フランスに住むイスラムは迫害の恐怖におびえているだろう。
非常事態宣言、国境封鎖は、いまだ絶えないシリアの難民の問題ともからんでくる。
テロは日本に及んでくる可能性だって当然ある。防ぐ手立てがあるのか。
わからない。だから「語れない」。
ベイルートで難民キャンプが襲撃された。数百人の死者が出た。日本ではあまり報道されない。ISに対する空爆は再開され、激しさを増してもいるとか。
3・11の時、世界各国からは「pray for japan」の声が届けられた。
今は「pray for paris」なのだが。
対イスラム問題。それを一概に「宗教戦争」とは位置づけ難いが、仮にそう思うとしたら、遠藤周作の代表作「沈黙」に“思考”の出発点をも置いてみる。
2015年11月16日月曜日
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