歌と言うものは時に数奇な“運命”をもっているのかもしれない。
辺野古で連日のように繰り返されている「強者」と「弱者」の衝突。
屈強な警視庁機動隊の若者が老人をごぼう抜きに半ば暴力的に扱っている光景。
地べたに座り腕をしっかりと組みあう沖縄の人たちから歌が聞こえてくる。
♪固き土をやぶりて 民族の怒りに燃ゆる島 沖縄よ
我らと我らの祖先が 血と汗をもて 守り育てた 沖縄よ
我らは叫ぶ 沖縄よ 我らのものだ 沖縄は
沖縄を返せ 沖縄を返せ♪
かなり古い歌だ。
そして、沖縄で何か事があると歌われる歌だ。
沖縄にはその歴史を語るとき、必ず「琉球処分」という”歴史“が語られる。
琉球処分はなにも一回だけのことではない。
今、沖縄にあること。それはもう何度目かの「琉球処分」だ。
民主党政権時、鳩山は「沖縄」を間違えた。
菅直人は国会の答弁で「今、琉球処分という本を読んで勉強しているところです」と言い逃れをしていた。その本は大城立裕の本を指していたような覚えがあるが。
その本を読んだのか、読後感含め、彼の口から琉球について聞いたことはない。
この歌は時には、その最後、沖縄“を”返せの部分を沖縄“に”返せと歌われる時もあった。
“を”と“に”の二文字の語るものは・・・。
日本の中にあって、日本でないような地としての沖縄。
この歌は多くの場合、反米、反安保の「運動」で歌われていた。それらの“闘争”は何かを切っ掛けに終焉することが多々あった。
そして歌も消えた。今、またその歌が蘇っている。だから“数奇な運命”と呼ばせてもらう。
今の沖縄の辺野古を巡る問題。これまでのイデオロギーとしての反基地、反米、反安保とはその在り様を異にしているとおもう。
根底にある“哲学”。それは人間の尊厳だ。翁長知事がしばしば言っているように。
だから、沖縄を返せではなく沖縄に返せという表現だって成り立つ。
尊厳を取り戻すという根底、人間本来の姿。
人間の、人間としての尊厳は、広島・長崎でも奪われてきた。そして福島もそうだ。
人間の尊厳を奪う。それは“差別”ということに通じる。
琉球処分、東北処分。差別として捉えることだって無理ではない。
原子力発電という文明の進歩、科学技術の進歩。それがもたらした恩恵。そしてそれが奪ったもの。福島の自然は戻らない。
安全保障の名のもとに押し付けられた米軍基地。それがさらに沖縄の自然を破壊する。
福島県民の歌というのがある。県民でも知らない人は多いが。
しゃくなげ匂う山なみに
呼びかけよう若い理想をかざして
あしたの夢がはてなく伸びる
明るいふるさと福島をつくろう
みどりひかる この空いつまでも
ああ 福島県
あゝ福島県という歌詞のあとに続けたいフレーズがある。
「福島を返せ、福島を返せ」と。
二番の終わりにには“フクシマ”を無くせ、とも付け加えてみたい心境だ。
フクシマで奪われたもの。人間の尊厳だけでは無い。田畑、森林、水、魚・・・。生きとし生けるものの尊厳が奪われている。
奇しくも今日の新聞の投稿欄にあった句。拝借する。
“ヒロシマとナガサキは核フクシマは原子力ならオキナワはなに”
枚方市の方の作だ。
短歌とて歌なのであり。
2015年11月8日日曜日
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