一昨日来た新聞の片隅に書いてあった。今朝のコラムにも書かれていた。
オリンピック代表団の壮行会で、森喜朗がこんなことを言ったという。
「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」。
「口をモゴモゴしてるだけじゃなくて、声を大きくあげ、表彰台に立ったら国家を歌ってください」と。
この壮行会、国歌は“斉唱”ではなく、陸自の“歌姫”による国歌「独唱」だったという。それは式場内に周知されていた。
独唱も斉唱も区別が付かないんだね。この老害おじさんは。
なんでこんなおっさんが2020年の東京オリンピック組織委員会の会長なんだろう。
音楽を政治に持ち込むな、スポーツを政治に持ち込むな。この人たちがそのお仲間たちが最近言い出したセリフ。
ならば問う。政治にスポーツを持ち込むな。議席を確保するために有名スポーツ選手を選挙にだすな。
東京五輪に向けてのこれまでの数多くのゴタゴタ、不祥事。どこかでこの男が絡んでいる。
ラグビー選手が全員、大声で国家を歌っているか。テレビで見る光景の中にそれは無い。足元のラグビー協会で喚けよ。
この人がこの国の総理大臣だった。ITが進み始めた時代。彼はそれを「イットとはなんだ?」と喋った無知無能な政治家だったという記憶。
彼は安倍の“後見人”でもある。
お互いがお互いの代弁者であるかのような光景を何度も見た。
スポーツ界に「君臨」する政治家。それも“独裁者”のごとく。
国歌「君が代」とはなにか。
古今集にある詠み人知らずの恋歌が原型だ。天皇陛下とは無関係な出自を持つ歌だ。
日本人は長らく「国歌」を持たなかった。明治になってから委嘱された宮内庁雅楽部が選んだのが君が代。
当時の為政者はこの歌の「君」を天皇陛下に置き換えた。
勝手な推測を言えば、天皇家にとっても“迷惑”なことでは無かったのではないか。
そういう場に居れば、そういう時であれば大声で歌う。国歌「君が代」を。
歌うには難しい歌だ。途中でオクターブあげてみたり下げてみたり。
「高らかに歌え君が代」。
それはどこか校歌を斉唱した時と同じ感覚だ。今週末には大学の学員会支部総会がある。
校歌を卒業生全員が知っているか。いない。口をモゴモゴさせているOBもいる。暗唱している自分は思いっきり歌う。それは「往時」を懐かしむだけの行為だけかもしれないが。
その大学は卒業したけれど、「愛校心」があるかと問わるとさしたる愛校心なるものもない。が、その時には歌いたくなるものが校歌だ。
オリンピック参加選手は誰しも「日の丸」を掲げたいという。思っている。国旗「日の丸」が掲揚される中で国歌「君が代」の演奏を聴く。それを目指している。
2011年、ナデシコジャパンが日の丸を掲げて場内を一周していた光景は忘れない。
その他でも日の丸を名誉として、それに身を包んで喜びを表現する選手も数多くいる。
スタンドからは日に丸の小旗が打ち振られる。
なぜ森喜朗如きに国歌君が代の斉唱を強要されなくてはならないのか。
非難されねばならないのか。それに対して自分の意見をいう選手がいてもいいじゃないかと思う。
場違いな言葉に対して相手がだれであろうと異論を言う。
そんな“気概”を彼らは彼女らは持っているはずだと信じたいから。
「裏声で歌え君が代」。丸谷才一の著作がある。かれは「君」を「恋する人」と認識したうえで、国家と個人を、独特の難しい文体で綴っている。
上りのエスカレーターを逆走して恋人を追う描写。それは高度成長に浮かれる世相を、国を、比ゆ的に表現したかったのだろうとも受け止めている。
主人公の一人である台湾人との会話では、「国家」と「民衆」、国家と社会制度のありようについての理論的な議論が交わされている。
国歌斉唱は「国家的建前」なのか。「国家の理想」なのか。皆が同じようにすることが。
スポーツと国歌。混同させて考えることしか出来ない「哀れな単細胞男」よ。
この男の無知蒙昧な言葉が選手のモチベーションを下げないことを祈るのみにて。
2016年7月5日火曜日
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