2016年9月27日火曜日

「空語」と「醜悪な光景」と

昨日午後、衆院本会議の所信表明演説を見ていた。来客があったので、テレビの音量を低くし、画面から目を逸らせていた。
なんか変な感じがあった。テレビに目を戻すと安倍が何かを言い、壇上で拍手をしている。
自民党の議員がぞろぞろと立ち上がり拍手をする。周りの議員も訳がわからぬような様子で周りを見回し、遅れてはならじとばかりに、やおら立ち上がって拍手をしている。

長年国会の本会議を、それこそ何十回、何百回と見て来たが、総理大臣が演説の途中で拍手を求め、自党の議員が拍手をする。
そんな光景は見たことが無い。

安倍の言ったことは、「今、こうしている間でも現場では、夜を徹して、自衛隊や海上保安庁、警察の人が任務に当たっている。この場所から心からの敬意を表そうではありませんか」というような事だった。

自衛隊は今たしかに南スーダンに派遣されている。海保は尖閣周辺で警戒に当たっている。警察は沖縄で辺野古や高江で自国民と“戦って”いる。

安倍の「空語」の等しい呼びかけ、賛同する自民党。

どこかの国の人民大会や党大会の様子を彷彿とさせる光景・・・。

本会議場で拍手で敬意を表されて、自衛隊員や海保の職員、警察官たちはどう思っているのだろうか。
感涙にでもむせんでいるのだろうか。

政治の舞台と、安倍のパフォーマンスと、現場は乖離しているのではないか。
何も考えずに無条件に立ち上がり拍手をする議員は何を考えているのだろう。

しばらくして議長が「ご着席ください」と言った。拍手は止んだが・・・。

なんとも醜悪な光景に見えた。

自衛隊には世話になった。自衛隊員に助けられた。災害地、被災地の人たちは多くがそう思っている。

「3・11」当時、原発事故時のことを思い出してほしい。機動隊にもずいぶん助けてもらった。住民を避難させるために自らの命を落とした警察官もいた。
海保の側面援助もあった。

何よりも力強く感じられたのは東京消防庁の職員の活躍だった。
大津波から地域の人を避難誘導したのは、そして一命を落としたのは地元の民間の消防団だった。

敬意の拍手を送るのなら、彼らだった筈だが。自国の災難に立ち向ったのは。

政治のばかばかしさに、さらに醜悪さが重なった。
勝手に思ったそんな感想。

そして補正予算をめぐってはまたや空語の連発だ。真水で無い数字列挙で煙に巻く呼びかけ。

今、その場に於いて“夜を徹してまでも任務にあたっている”のは誰か。
保育園の保母さんであり、介護施設の職員であり、まともな医療関係者なのだ。

問題を抱える家庭を回り、親身になって相談や介護にあたっている民生委員などだ。

なぜ「国権の最高機関」が、“弱者”と共にいて、任務を果たしている人たちに送る拍手を持たないのか。

一事が万事、この国の姿を見たような気がして・・・。

お願いだ。自民党よ覚醒してくれよ。

「同調」の実態を見せつけてくれた衆院本会議。なぜ「まとも」な自民党議員は沈黙し、自粛しているのか。

そっちの方が悲しいかもしれない。

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