テレビで河島英五が歌っていました。ピアノの弾き語り。「時代おくれ」。サラリーマンに成り立ての頃、新宿のゴールデン街のスナックでよく流れていた歌・・・。久しぶりに耳にしたこの歌。あの頃は聞き流していたのに、なぜか染みいるものがあるんです。作詞は阿久 悠。彼の詩は憎らしいくらい上手い・・・。
♪一日二杯の酒を飲み 肴は特にこだわらず マイクが来たなら微笑んで 十八番(おはこ)を一つ歌うだけ 妻には涙を見せないで 子供に愚痴を聞かせずに 男の嘆きはほろ酔いで 酒場の隅に置いて行く 目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは無理をせず 人の心をみつめつづける 時代遅れの男になりたい♪
♪不器用だけどしらけずに 純粋だけど 野暮じゃなく 上手にお酒を飲みながら 一年一度酔っぱらう 昔の友にはやさしくて 変わらぬ友と信じ込み あれこれ仕事もあるくせに 自分のことは後にする 妬まぬように 焦らぬように 飾った世界に流されず 好きな誰かを思い続ける 時代遅れの男になりたい♪
すっかり忘れていましたが、1960年代、この歌を聞きながら、"そんな男"に憧れを抱いていたようでした。男の嘆きを隅に置いていかれた酒場のママさんはどうそれを処理すればいいんだい?ゴミとしても出せないぞ。なんて与太飛ばしながら・・・・。
you tubeであらためて聴く河島英五。阿久悠節。
倉本聡のドラマのワンシーンが浮かんでくるようでもあり、宮沢賢治の世界に引き込まれるようでもあり・・・。そう、彼らの世界にはいつも時代遅れの男達が登場していた・・・・。時代遅れの男になりたいーーーそういうものにワタシはなりたい・・・。
阿久悠は「歌は時代を語り続けた」と言っています。男の"美学"を歌に託しました。ちょうどトレンドなる言葉が登場し、誰もが皆流行っていうものを追いかけた、追いかけようとしていた時代。そんな時代へのアンチテーゼのような歌・・・。
歌詞の何処かに自分が重なります。そして思います。時代遅れの男になりたいではなく、時代遅れの男になったーーーと。
今朝、どの服を着ようかと迷いました。結局取り出したのが、昔の服。今のようにスリムな仕立ててでなく、タックがついたダブダブ系。時代遅れの服・・・(爆)。
飾った世界、虚飾の世界に、今の時代に生きる人は流されています。流され過ぎです。IT革命、先端技術の進歩が飾った世界を加速させた・・・・。それにあらがって生きていくのは難しい・・・・。だけど、皆、阿久悠的"美学"には憧れているのでは・・・・。
今夜は時代遅れのような男と酒を飲む予定です。もちろん二杯では済むはずも無く(笑)。もし彼と歌うはめになったらこの歌一曲だけを口ずさんでみようかと。そして自分自身へつぶやいてみます。「時代遅れの男になりたい」と・・・・。