昔、交通事故防止の啓発標語にあった「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」。
もはや朽ち果てた言葉か・・・。
やはり、世の中、スピードと便利さが最高のものという“価値観”がまかり通っている。スピード・便利至上主義だ。
先日もリニア中央新幹線のスピード実験があり、時速603キロを記録したと軒並みメディアは伝えていた。
通過地点の“展望カ所”のようなところに見学者が集まり、その速さに驚愕の声をあげ、携帯で写真を撮って大騒ぎの光景。
603キロを記録した時に、その担当部署に上がる拍手と歓声。
東京(品川)と大阪間が全通すれば、今の東海道新幹線より所要時間は1時間あまり短縮されるという。平均時速500キロ。それが目標。
総工費は9兆円。東日本大震災の復興資金、原発事故収束のために国が東電を支援する予算も9兆円。
JR東海は言う。2045年に全線開業すれば8,700億円の経済効果があると。
2027年には東京・名古屋間が開業予定だ。ピーク時の想定消費電力は約27万キロワットとされる。東京・大阪間が開通すればピーク時の消費電力は約74万キロワットと言われる。
福島原発事故があったばかりの2011年5月、すでにしてJR東海の葛西会長は「原発継続しか活路は無い」と明言している。
74万キロワット、それはたとえば浜岡原発1基分に相当する電力量だ。
3・11以降、電気に頼る生活への疑問を持った人たちもいる。節電が言われた。それを実践している人たちもいる。
国民の電力消費量。50年前に比べて、今は、少なくとも原発事故前までに比べて、なんと4倍以上に増えているのだ。
9兆円の投資を回収するためには原発再稼働しかない。至極当たり前の論理だ。
リニア新幹線は他にも数々の問題点が指摘される。ほとんどがトンネルの掘削工事。それによる自然環境の破壊、環境の変化。
大量輸送手段、スピードによる経済波及効果。それは喧伝される。リニア反対運動がある。地元の人たちを中心に。
しかし、その「動き」はほとんど話題にされない。意図的と思えるくらいメディアは取り上げない。
603キロという“夢の数字”が達成されると「勝利の雄叫び」を上げる。
500キロのスピード、トンネルだらけの沿線。車窓の風景を楽しむなんて旅はそこには存在しない。
これって我々が求めていた新世紀の夢の生活なんだろうか・・・。
新幹線技術やリニア技術は海外にも輸出される。技術大国日本と誇らしげに言う人もいるはず。
50年前の4倍の電気使用量。たしかに周りは電力頼りばかりだ。いくら省電力を謳っても、あらゆる家電製品の中で我々はその近代的生活を享受している。
それを皮肉な光景というかどうかはともかく、在来線の、SLは依然憧れであり、のんびりした列車旅を望む人も増えているという。
電気を使わない生活なんてありえない。
でも、余計な電気とまでは言わないが、スピードをこよなく希求するための、時間を電気で買うといった暮らしまで必要なのだろうか。
もはや「リニア」は既成事実となった。止めるわけにはいくまい。リニアを理由に再稼働という論理は当然出てくるはずだ。
省電力モードにしてあるとは言え、こうやってパソコンの電源を入れ、電力を消費しているくせに・・・と言われるかもしれないが。
2015年4月26日日曜日
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