管子、あるいは管仲。中国の戦国時代の政治家。有名な言葉があります。
「倉廩(そうりん)実(み)ちて則ち礼節を知り、衣食足りて則ち栄辱 (えいじょく)を知る」。
つまり、「衣食足りて礼節を知る」ということ。多分、中学か高校で習ったはず。人は、物質的に不自由がなくなって、初めて礼儀に心を向ける余裕ができてくると解釈されています。これに”異議“あり。そんなはずは無い。日本語にもあるでしょ。武士は食はねど高楊枝ってのが。
論語にある、寄らしむべし、知らしむべからず。これが、君主の命令は聞かせるようにし、従わせる。何も民草に知らせることは無いと解釈されているのと同じように。違うんです。知らしめるってことは難しいと解釈するのです。政事を国民にわかりやすいようにすべきだという教えと解釈するべきなのです。
養老孟司の「超バカの壁」にはこうあります。「多くの人は衣食が足りないと礼儀知らずになる、下品になる。 というように受け止めているでしょう。 でもそういう意味では無い。人間は 衣食が足りないうちは、まともな考え方はできない。ある程度の衣食をきちんと保障するのがいかに大事なことかと解釈すべきだ」というようなことが。
衣を整えることが礼節の第一歩だと言っていると亭主は解釈します。
きょうは郡山も晴天。暑いくらいです。近くにある葬祭場では葬儀が執り行われていました。黒の礼服に身を包んだ人たちが集まって来ています。それは死者に対する礼だと思っているからと。
クールビズという服装。なんとかって言う女性の大臣が唱えてから大流行になった服装。ネコも杓子もクールビズ。あげく、なんでも飛びつくマスコミ。なんとスーパークールビズなんて言葉や格好が登場。ポロシャツツ、サンダルで。「仕事の能率が上がります」。インタビューに答える会社員。まだ、そんなに暑くはないのに。節電に名を借りた、なんとも言えない流行。
閣僚は沖縄のカリウシウエアで閣議に。国会の中を歩き回る。示しあわせて。
国会議事堂。本会議。政治家として最も礼儀をもって臨む場。スーツにネクタイ当たり前でしょ。
その服装が礼を失しっている。そこからは礼を持った政事は生まれてこない。
昔話で恐縮ですが、毎夜、目白の田中角栄邸に行っていた頃。夏。たまたま早帰りしていた角さん、湯あがりだったのでしょう。単衣の着物に三尺帯。額に汗をかきながら応接間に。開口一番。「こんな格好で申し訳ない」。たとえ相手がネタ欲しさの記者共だって「礼」を失してはならないという心意気があった。
もう無職になってどんな格好をしても許される亭主ですが、今でも人前に出る時や塾生の前で講義するときは、どんなに暑くてもスーツにネクタイという格好で臨みます。相手に「暑苦しい」と思われても。
胸襟を開いて話し合おう。それをネクタイをはずしてと思っている人もいます。違います。心がけの、心の問題。心を開いて話し合おう、打ち解けて話をしようという意味です。
あのテレビに映る“クールビズ”なる格好の、それも、全く似合わない服装。そこから、国民に対する「礼」は垣間見えないと。
節電の夏。しかし、我慢する、耐える、身を整える。それが肝要だと。それの方が身が引き締まるかとも。
ネクタイはずして、変な格好している人たちから発せられる言葉にはどうしても、それが軽々しく、信を置けないと思う亭主は変わりものの頑固ものでしょうか。
エアコンに無い時代にも人は皆、衣を整えていた。
「クールビズで売り上げ増」なんてニュース見ると腹が立つのは、やはりおかしいか、ファッションセンスの無い、古い時代を生きてきた老もうの世迷い言か。お許しくだされ。
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