今日6月23日は沖縄慰霊の日。沖縄での戦闘が事実上終わった日だ。70年前。
記念式典は正午前からだという。NHKをつけた。式典の模様が“中継”されたのは定時ニュースが終わってからだった。
翁長知事の平和宣言、沖縄の高校生の詩の朗読、そして安倍首相の会挨拶。
12時45分からはいつものように連続ドラマ。6月23日は日本にとって「特別な日」であるのもかかわらず、いや、今だからこそ余計に「特別な日」であるにも関わらず、つまらない連続ドラマを欠かさないNHK。
それが今の日本の姿を象徴している。
安倍の後にも来賓のあいさつがあり、駐日大使も臨席していたはずだ。式典が終わるまでの、それが“録画”であっても放送するのが使命だと思うのだが。
式典の余韻を噛みしめることが、平和を考えることにつながるのだとも思うのだが。
式典で述べられて高校生の詩。やはり印象的だった。広島や長崎でもそうだ。もう戦争を原爆を「知っている」人は1割にも満たない。語り継ぐべき若者たちが、それを語ると言うことに意義があるのだ。
詩を読んだのは、沖縄県立与勝高校三年の知念捷クン。詩の題名は「今は平和でしょうか」。
戦争で夫を亡くした大伯母の話をもとに書かれた詩。沖縄語では「みるく世(ゆ)がやゆら(今は平和でしょうか)」というのだそうだ。「今は平和でしょうか」を。
大伯母は夫を亡くした無念を抱えたまま認知症を発症。介護施設で今も、出征する夫を思う歌「軍人節」を歌い続けているという。
彼は読む。
「無慈悲にも自然の摂理は 彼女の記憶を風の中へと消してゆく」と。
平成生まれで、どこまで大伯母の思いに寄り添うことができるかは分からない。しかし、それでも、「潮風に吹かれ 私は彼女の記憶を心に留める」「みるく世の素晴らしさを 未来へと繋(つな)ぐ」と誓った。
式典が行われた摩文仁の丘。平和祈念公園。最後の激戦地でもあったところだ。
首里を放棄した日本軍が最後まで“抵抗”した場所。本土の司令部から「持久戦」を指示され、米軍の本土上陸を阻止しようとした場所。
多数の民間人も犠牲になった場所。民間人がにわか仕立ての軍人にされ命を落とした場所。
その地で最後まで指揮をとった大田実中将。自決の前に打った最後の電文。
「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」。
県民が戦ったことを明記している。
沖縄戦。それはまさに「正史」だ。今を生きる人たちはその「正史」と真摯に向き合わねばならない。
後世の特別の高配が米軍基地だということなのか。
摩文仁の丘には戦没者の名を刻した礎がある。沖縄の子どもたちによって今日までに綺麗に拭き清められた礎。その前で遺族は慟哭していた。
NHKだけではない。民放のニュースもどこかおかしい。
式典が始まる前の様子を伝え、「悲惨な地上戦の終結から70年、体験者が少なくなり、戦争の風化が懸念される中、沖縄は23日、平和とは何かを改めて見つめ直す一日となります」とアナウンスは結ぶ。
平和とは何かを見つめ直すのは沖縄だけのことではないのだ。
日本中がこの日も沖縄を想い、平和を考えるべき日なのだ。
どこか「沖縄だけのこと」とする“意識”が垣間見られたようで悲しい。
基地とても沖縄だけのこととするかのような空気がそこに見えるような。
礎。それは3・11以降、それも風化がすでにして言われ始めている被災地にも各所にある。
宮城県名取市の閖上地区にある14人の中学生の名前を刻んだ礎。福島にだってある。子どもの名を刻んだ礎が。
それらは宮城や福島だけの礎ではない。
国会が戦争法案を成立させるために、戦後最長といわれる95日間延長された。
「今は平和でしょうか・・・」。
高校生の問いかけは重い。
2015年6月23日火曜日
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