「桃李もの言わざれども下自ら蹊を成す」。史記にある有名な言葉だ。
以前から好きな言葉だった。もう20年も前か。郡山の隣町に三春町がある。緩やかな起伏のある地形。国道288線から脇にそれ、小道をちょっと上がるところに喫茶店があった。そこにこの言葉が額装して掲げられていた。
三春の地名は、春になると桜、梅、桃が同時に咲くと言うところから付けられた名前だという説もある。
史記の言葉の意味はおおむねこんなところだろうか。
“桃やスモモは自分から見に来いとは言はない。黙って咲いていても、その美しさに惹かれて多くの人が見に集まって来て、自然とその木の下には蹊(こみち)が出来る。
つまり、徳のある者は多弁を弄し、多言を用いなくても、人はその徳を慕って自然に集まってくるものだ“。
成蹊大学、学園というところの名の謂れだ。この故事に由来した学校だ。記憶にある成蹊大学の光景。校門から校舎までの間に、長い小道があったと覚えている。さながらその小道は「哲学の道」のような風情を醸し出していたのだが。
安倍晋三は成蹊大学の出身だ。いや、正確に言えば小学校から大学まで、いわば「エスカレーター」に乗って上がってきた学歴。
彼が通った学び舎。そこの名前の謂れ、由来。たぶん彼は知らないのだろう。
彼にとって成蹊学園と言うところはいかなるところであったのか。
「学ぶ」ところであったのか、「青春の一時期」だけを“浪費”しただけのところだったのか。
お勉強は、家に帰って、家庭教師の東大生、平沢勝栄に習っていたのだから。
平沢勝栄、福島高校から東大法学部卒。警察官僚、自民党衆院議員、時にはちょんまげの鬘をつけたタレント議員・・・。
法学部卒だから憲法にも知見があると推察する。
今、安倍は学生時代の「先生」をどう思っているのか知らないが、あまり重用はしていないみたいだ。
しかし、拉致問題に首を突っ込んだり、憲法について薀蓄を傾けるなど、多分に“類似点”があるような。
安倍は「校訓」に比して極めて多弁だ。国会での答弁、長々と喋る。しかし、かつてそう呼ばれた人がいたように「言語明瞭意味不明」なのだ。
一般的・我々・要するに・基本的に・総合的に判断して・・・などなど話をはぐらかすような枕詞を多用する。
論理は全く破たんしているにも関わらず、自分の意志を押し付ける。
挙句、やってはならない野次を飛ばす。それも全くの喧嘩腰に。
とても「徳」のある人には思えないのであり。
挙句、安保法制の担当閣僚である中谷防衛大臣はこんなことをのたまわっていたみたいだ。
「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえまして閣議決定を行ったわけでございます」。
無知にもほどがある。防衛大学では憲法をどう教えていたのだい。
憲法を法律に適応させる・・・。憲法は誰に聞いても「最高法規」だ。そのもとでの各法。刑法、民法、商法、刑訴法。民訴法。その下に各種の法律、法令が存在する。
自分たちが勝手に作ろうとしている11本の法律を憲法に「適合」される。
この人たちって「立法府」という法の名の付くところにいて、禄を食んでいる人の言うことかい。
饒舌な安倍は桃や李にはなれない。姿、見た目は格好いいかもしれないが。
誰かがにわか仕立てで作った道を“安倍教信者”が歩いていくだけ。
史記にはこんな名言もある。
「千軍は得易きも、一将は求め難し」。その意味は多くの軍兵は容易に集められるが、それを統率する、ただ一人の武将を得るのが難しい」というようなこと。
後方支援なるものの撤退判断。それも詭弁でしかないのだが。安倍は武将ではないはずだ。
2015年6月7日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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