今朝早く玄関のチャイムが。戸をあけてみると。ご近所の犬とそのおかあさん。
犬は大きなラブラドール。名前は「キイウイ」、通称「キューちゃん」。めちゃめちゃ人懐っこい犬です。巨体をゆすって喜びを表現する。
そのおかあさんが持ってきてくれました。ひいらぎ木犀の二枝。キューちゃんの家の庭に咲いている樹です。
「澪ちゃんのお花がさきましたよ。澪ちゃんに供えてください」。
去年の11月に死んだ澪。澪とゲンキは朝の散歩の時によくキューちゃんの家の前を通りました。犬同士が仲良しってわけじゃないんでしょうが、近くに行くとキューちゃんがいつも大声で呼ぶ。数分間のご対面。
我が家では犬が亡くなると「記念樹」を植えることにしています。澪の記念樹は柊木犀。キューちゃんの家の庭にあったし、どことなく似合いそうな花だったから。でも、我が家の庭に植えた柊木犀はまだ育っていません。
それを知ってか知らずか、わざわざ持ってきてくれたお母さん。感謝の一語です。嬉しい手向けです。
亭主のパソコンのキーボードのところに澪の写真があります。時々意味もなく語りかけていることがある。特に何をってのではないのですが。返事はないけど写真の表情が時々違うように見える。きょうは嬉しそうな顔をしている。眼をぱっちり開けている。
柊木犀、銀木犀の季節なのですね。
新聞の歌壇に寄せられていた歌。
「木犀の香にふあんと包まれて放射能からふと離れぬ」。いつも頭の中から離れない放射能のこと。ふと気付いた木犀。樹に花にこころ奪われた一瞬。作者の心は「除染」されたのでしょう。
澪は放射能のことは知りません。よかったのだと。
「どんぐりもきのこたけのこ好きな熊、原発事故を知る術もなく」。これも歌壇に投稿されていた作品。澪はちいさい熊のようだった。ドングリを拾って食べはしませんでしたが。
季節になると必ず季節の花が咲く。花に意思があるのかどうか。農作物も草花も人が話しかけると綺麗に咲くし、おいしく育つという。人間の思いこみかもしれませんが。
自然に「意思」があるのかどうか。地震に津波に「意思」はあったのか。無いと思います。津波に「襲われた」というけれど、津波に人を襲うという意思があったのかどうか。無いと思います。
勝手な自然現象だと。その自然現象に、人間は「想念」を巡らせ、さまざまな感情を抱くだけかも。
多くの命が奪われてのに今年の春も桜は見事に咲いていた。その桜をどう見るかは人それぞれ。
バカバカしい話かもしれませんが、いただいた柊木犀にだって放射能は降り注いだはず。「汚染」されているかもしれない。そんなことよりももっと大事なこと。その花をわざわざ持ってきてくれたこと。柊木犀の葉一枚一枚を撫でました。花に顔をくっつけてその香とかぎました。
何カ月も花や樹に眼が行かなかった。きょうからはちょっと気にしながら、目線を変えてみよう。秋の草花に寄り添ってもらおう・・・。
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