いつの頃からか。命名権ビジネスというのが流行り、野球場が企業の名前に続々と変わっていった。
どっかの地方自治体でも、その名前を売りますみたいな事があった。
企業にとっては大きな宣伝効果なのだろうが。嫌だ。
脇道に逸れるようだが、郵便番号制度が出来てからというもの、東京でも地名がどんどん変わっていった。
例えば西麻布。今はどう呼んでいるのか知らないが。かつては麻布笄町と言った。たぶん笄を作る店が多かったからであろう。やがて霞町になって・・・。
隣の町、長い間そこの会社にいたとこ。そこは材木町だった。やがて六本木6丁目に変更に。
文京区には真砂町があった。今は本郷何丁目に。泉鏡花の娘系図だったか。「真砂町の先生」というのが登場している。芝居にもなっている。文学作品にあった町が無くなる。まさか今の地名に書きかえられているわけではないだろうが。
郡山にも戦後は稲荷町と北町とか、その地の由来がわかるような地名があった。今は無い。大町何丁目とか、駅前何丁目とか・・・。
地名はその場所の町や村の由来や歴史を物語っている。安易に変えて欲しく無い。“合理性”なるものの為せる業か。
福島の県営あづま陸上競技場が命名権を東邦銀行に売った。5年間で5,250万円。新たに「とうほう・みんなのスタジアム」ってのが登場する。銀行の頭取と県知事が文書を交換した。久しぶりに見ましたよ。県知事の間抜け顔。
曰く、「とうほう・みんなのスタジアムから元気を全国に、世界に発信してほしい」。
名称が変われば元気が発信出来るってことかと絡みたくなる。
「あづま」は県内の雄峰、吾妻山に由来していることは当然だ。事実、あそこからは吾妻山が望まれる。冬から春にかけて見られる有名な光景、吾妻の雪うさぎ。
古都鎌倉でもそうだ。由比ヶ浜、腰越、材木座。有名な海水浴場の命名権が地元の豊島屋、鳩サブレで有名なお菓子屋さんに譲渡された。
名前はまだ決まってないというが・・・。歌にも歌われ、鎌倉を代表する地名だったのに。
まさか浪子不動まで、その碑まで売らないだろうな。徳富蘆花が怒るぜ。
これじゃユネスコも文化遺産には登録しないだろう。
なんか嫌だ。短絡的だがカネのために地名をすら売るってことが。カネが歴史を消していくようで。
1F含めて日本には原発が54基ある。県名がついているのは福島と島根だけ。あとは市町村名。
福島第一原子力発電所という名前で無かったら、福島県全体に及んだ風評被害なるものも、風向きが変わっていたのかもしれない。
まさか東京電力が福島県という名前を買うわけは無いだろうが。
苦悩が続く双葉郡。人が戻らない地域もあるかもしれないが、その地名は消さないでね。
その地は日本人が永久に忘れてはならない地名であるはずなのだから。
そして津波で流された地名も。そこに何も無くなっていたとしても。たとえ沖の小さな小島や祠だとしても。
なんでもビジネスなんだな・・・。地方財政が逼迫してるって言えばそれまでだけど。