礼に始まり礼に終わる。スポーツでよく言われる言葉だ。その祖は柔道のようだが。
それは対戦相手に対しての「礼」だ。
「礼」。そこには一つの精神世界があると思う。それは「敬意」を表するという意味でも、自分に対してでも。
初詣。社殿の前でたとえば二礼二拍の所作をする。そして手を合わせて拝む。
「礼」という所作は美しい。八百万の神への感謝と祈願、そして自分への願い、誓い・・・。
朝、犬と散歩している時、寺の境内に寄ることがある。本堂にむかって一礼をする。その場は礼をするのにふさわしい場所と思うから。
3・11後は特にそうだった。静謐が支配する境内。
とにかく祈っていた。
スポーツの話しに戻る。
駅伝、マラソンを見るのが好きだ。ゴールテープを切る、ゴールする。走って来た道路に頭を下げて礼をする選手を見かける。その選手が好きだ。
サッカーでもいる。選手交代時、ピッチに礼をしてベンチに帰る選手がいる。そんな選手を見ると涙ぐむ。
フィギアスケート。演技を終えてリンクを出るとき、必ずリンクに向かって礼をする選手がいる。
最近見た中では、そうしているのは男子では羽生結弦と、女子では本郷里華だったような。
観客にでは無く、リンクに礼をする。リンクに出て行くときも戻ってきたときも。一人一人の演技だ。対戦相手がいるわけでも無い。
走らせてくれた道に対して礼をする。滑走させてくれたリンクに対して礼をする。
高校野球の選手もそうだ。
必ずグラウンドに対して礼を欠かさない。
もちろん試合の前後には相手チームの選手同士で礼を交わす。
3・11以降、行かなくなったスポーツクラブ。そこのコーチの一人の女性は、スタジオに入ってくるとき、必ず一礼をしていた。
レッスンが終わってからもスタジオを出る時、振り返って礼をしていた。
ある時、その人に聞いた。礼をするわけを。
「あまり意識はしていませんが、なんとなくそうなるのです。これからの時間が、その場が自分にとって大事な場所だろうと思うから。そして、そこで“仕事”をさせて貰ったことに感謝したかったからでしょうか」。
その人のレッスンは必ず受けたいと思った。
礼をする。それが軽く頭を下げるだけの行為であっても、その意味合いは大きい。その若いコーチに教えられた。
「礼」とは相手があってすることなのだろうか。そうでもなさそうだ。
学生時代、教室に入るとき礼をしていたか。していなかった。
学びの場に対して、そこに礼をするということは無かった。
有ったのは先生が壇上に立って、起立、礼の級長の掛け声があった時だけ。
その場に対して礼をする。頭を下げる。それは「自分自身」への事なのだろうと。
テレビで初詣の光景を見ながら、ふと思ったこと。なぜか。
「礼」をする人が少なくなったからかもしれない。
かつて、国会で本会議場に入るときは、与野党問わず議場に向かって礼をして入っていた。着席する時も議長席に向かって礼をしていた。
単なる慣行だけだったのだろうか。いや、「議場は神聖なもの」という意識があったからではなかろうか。
格差社会である。
その中にあって「ノブレス・オブリージュ」は、それを果たすことは富める人の一つの「礼」ではないだろうかとも思う。
礼儀も礼のうちではないだろうか。
どんな小さな集まりであっても、その中で決められた自分の役割を果たすということ、それは仲間に対する「礼」ではないだろうか。
身近な些細なことからも「礼」ということを考える・・・。
2015年1月6日火曜日
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