久しぶりに事務所に。
事務所といっても六畳一間くらいのアパートだけど。
壁にある、入った「亀裂」はそのままだ。あえてそのままにしている。
「あの日」を忘れないためにも。
モニュメントとしての亀裂。
六畳一間に刻まれた亀裂から、今の世の中にある亀裂を垣間見えるような「気がする。
日本社会に走っている三本の亀裂。
富裕層と貧困層の、貧困までいかなくても、いわゆる低所得者との間にある所得の亀裂。
東京を筆頭にした大都市圏と地方との間にある地域間の亀裂。
そして三つ目は高齢者と若者の間に微妙に存在する世代間の亀裂だ。
亀裂は広がる。広がれば分断になる。
分断、ひとつの良い例が沖縄だ。
そして福島にはもう一つの亀裂がある。県民同士、被災者同士、避難民同士に生まれた心の亀裂だ。
それは、あのバリケードで仕切られた、そのことが象徴するかのようなもの。
放射能のへの考え方、賠償金をめぐる誹り。避難するかどうかの家族間の亀裂。
それぞれがそれぞれの価値観を持つ中で、一度生まれた亀裂は、分断に突き進んでいくかもしれないと言う危惧。
福島にあって、今年のキーワードは「亀裂と分断」なのかもしれない。
亀裂は埋めなくてはならない。それが染みついてしまわないうちに。
でも、誰が、どうやって埋めて行くのか。
個々人の考えか、国家の問題か。
この国の今の政治が、その亀裂を埋める作業に真剣に取り組んでいるとか思えない。
政治の為の政治でしかないと思えるから。
自己保身と一部の人達を念頭に置いた、その場しのぎの「まつりごと」としか見えないから。
例えば「教育」の問題にしてもそうだ。最低限の教育は保障されている。しかし、教育の場にあって、貧困の子どもたちは“差別”という範疇に置かれる。
ゲーム機を持たない子どもたちは「孤」の空間にしかいたられない。
塾に通わなければ、上の学校には入れない。塾に通うにはカネがかかる。勢い、大学に進み、それも東京の大学に進み、大企業に就職するとか、官僚になるとか、嫌味ではないが「支配層」に属するためにはカネがかかると言うこと。
その子たちのせいではないが、貧困を知らない若者が、支配層になるということ。価値観の中に「貧困」が入ってないという人達が君臨しはじめるということ。
それは「戦争」についてだって言える。戦争を知らない人達が指導者になっている時代。
全ての戦争は「自衛」という名分から始まっている。
どうやってこの「亀裂」を埋めるのだ・・・。
福島の亀裂だって、科学者や医学者の、科学的知見、医学的知見と言う「虚構」の論理の中でもたらされてはいないか。
政治を見捨ててはいない。政治家に覚醒を求めたいのだ。民のための政治とは何かを、原点を学んで、考え直して欲しいのだ。
政治だってどうしようもないこともある。ならば個々人が考え直すことは多いはず。
唐突だが、歌壇にあった一つの句。
「復興の願いを友は語れども、4度目の冬も二間の仮設」。
この句から亀裂の兆しを感じるは愚なりしか。
亀裂を「共有」する方途はありやなしやとも。事務所の壁の亀裂は今年もそのままにしておく・・・。
2015年1月5日月曜日
“チェルノブイリ”異聞
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