震災後、「ふるさと」という言葉ほど数多く登場した言葉はない。故郷・・。
他にもあてる字がある。古里。そして読みは違うけれど郷土という言葉も。
「故郷に帰りたい」「故郷を捨てる気にはならない」「元の故郷を取り戻そう」・・・。
被災地を訪れた音楽家たちは、そこの人たちと一緒に必ずといっていいほど歌った。童謡の“ふるさと”。ウサギ追いしかの山、小鮒つりしかの川・・・。
この歌ももちろん、小学唱歌で故郷の歌をいくつも教わった。幾歳ふるさと来てみれば、咲く花、鳴く鳥、そよぐ風・・・。
そこに「郷土愛」を植え付けようという教育理念があったのかどうかはしらない。日本人にとって故郷という精神文化は切っても切れないものだったのだろう。
いや、日本人だけではない。生きとし生けるものすべて「故郷」への情念を持っているのだろう。
オールドブラックジョーやジョージア オン マイ マインド。音楽ではないが、ペペルモコの映画、望郷。イタリアのニューシネマパラダイス。
故郷とは人間にとって永遠の「テーマ」なのであろうか。
望郷。戦地に赴いた兵士は「生きて故郷の地を踏もう」と言い合ったという。それは日本という国土だった。亡き戦友の骨を彼の故郷に持ち帰った・・・。
言葉の意味を求めてふるさとで辞書をひく。
「古里、故郷」とある。
古くなって荒れ果てた土地。昔、都などのあった土地。
自分が生まれた土地。郷里。こきょう。
かって住んだことのある土地。またはなじみ深い土地。
こんな味気ない字解きが記されている。ただ一つ。引用例としてあげられている和歌。古今和歌集。「人はいざこころもしらずふるさとは花ぞ昔の香ににほいける」。昔人も故郷を想ったのだ。
ふるさとは遠きにありて思ふものそして悲しくうたふものよしやうらぶれて異土(いど)の乞食(かたい)となるとても帰るところにあるまじやひとり都のゆふぐれにふるさとおもひ涙ぐむそのこころもて遠きみやこにかへらばや遠きみやこにかへらばや
室生犀星の詩。故郷を「捨てた」ものの悔恨の歌か。
石川啄木も詠んだ。
故郷の訛り懐かし停車場の人ごみの中そを聴きにいく。
なぜ人は故郷を恋ふるのかー。あらためて考えてみたくなった。
“チェルノブイリ”異聞
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