「郷愁」という言葉がある。悲しみや侘びしさを伴った言葉のように聞こえる。故郷を思う心は、この郷愁という思いと重なるような気がする。
自分の過去をたどる。郷愁の一つのありよう。過去とは自分の歴史である。事実に基づいた歴史である。故郷には自分の歴史があるのだ。
友達と、それを示し合わせていたわけではないが、「昔語り」をする時がある。語りあううちに、記憶の襞の中に埋め込まれていた過去が顔を出す。それがいいとか悪いとか、その時代がよかったとか辛かったとかを言いあうのではない。
過去の自分との遭遇。それは、未知への遭遇よりも楽しかったりする。忘れてしまった過去も、忘れたい過去も、すべて自分の歴史である。
故郷には自分の歴史があるのだ。置いてきたものがあるのだ。だから、人は、時に、故郷を恋う。慕う。惜しむ。
故郷を無くすということは自分の過去を失うということに等しいのだから。異土に身をおいていたとしても、故郷を思える人はまだ恵まれているのかもしれない。
故郷を思う間も無く死した人を思えば。自分の過去を振り返る束の間も持たなかった人に比べれば。
酒を飲みながらの昔語り。郷愁を楽しみ。寒空の帰り道。ちょっとだけ明日という日の楽しみが増えたような。
共通する過去や時代が無いと昔語りは難しい。どっかの仮設で、一人郷愁にふけっている老人がいるかもしれない。語りあっている老夫婦がいるかもしれない。
郷愁にひたるがよい。時として郷愁は、人を前向きにさせるかもしれない。決してネガティブシンキングではないと思う。
だれか故郷を思わざる。
それにしても寒い毎日。体調不良の人出るのは当たり前かと。
分断された故郷。そこに住む人、住んでいた人との「こころの分断」を招き始めている。
2012年1月29日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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