2012年7月21日土曜日

その男の登場が、デモの価値を下げた

華麗なる一族。山崎豊子の小説の題名を借りるなら、そう呼んでもいいだろう。
名門、鳩山家。

鳩山一郎のことは、その信条や政治経歴は本でしか知らない。鳩山威一郎。外務大臣時代に付き合いを持った。突出したところは無いが、温和で冷静で地味な政治家であった。

その子、鳩山邦夫。政界入りを目指し、父親の口ききもあって、砂防会館詰めの田中角栄秘書になり、修行、丁稚奉公をしていた。当時は好青年という印象。その兄、鳩山由紀夫。会ったことは無い。いつの間にか政治の主役、主演者になっていたような。

人は彼を宇宙人と呼ぶ。なぞらえられた宇宙人が迷惑する。その意味はわけのわからん奴というイメージから来ているから。缶コーヒーのCMに出てくる宇宙人のジョーンズさんの方がよっぽどわかりやすいし、まともだ。社会を見る目は痛快なくらい的を射てる。

きのう官邸前での反原発集会、デモ。デモと呼ぶのが相応しいかどうかはともかく。7万人の人が集まったという。その中に鳩山由紀夫がいた。元総理大臣。その官邸の主だった人。集団の中に身を置き、ハンドマイクを持って叫ぶ。「皆さんの声を聞き、官邸に届けようと思ってやってきました」。そして取り巻きと警護官に守られながら官邸に入り、官房長官に会ったという。

事実だけを簡単に列挙する。デモがあった。鳩山がその場に登場した。マイクをもって「反原発もどき」のようなことを言った。官邸の中に入った。

鳩山は野田に会おうとしたという。野田がいない事を知らなかったという。それは嘘だ。きのうは豪雨の被災地を視察にいくことはあまねく報道されていたのだから。会おうとしたけど会えなかった。ポーズだ。

この官邸前の反原発集会の主催者が誰だかはしらない。鳩山がその場に行くことは、鳩山の側から主催者に伝えられていたか、主催者の方が鳩山に参加を要請したのか。ハンドマイクを持っていたのだから、当然、彼の周りには主催者側の人間がいたことになる。その辺の真相はどこも書かない。伝えない。
これは常識である。元首相が現首相に会いたい。いくらでも会える。官邸への出入りももちろん自由だ。会いたいのなら、会って伝えたいことがあるなら正々堂々と政治家対政治家として会えばいい。まして、未だに民主党員であることに変わりは無いのだし。“活動家”が面会をもとめることとはわけが違う。

この件について、昨夜、無人地帯というヂキュメンタリー映画を作った藤原敏史監督と“会話”した。その映画を全編見る機会には恵まれていないが、その映画が国際的に高く評価されていることは知っている。ダイジェスト的なものは見たが、原発被災地、避難民に対する彼の眼は優しい。そして、かれのカメラは事実を追い、限りなく真実に近づこうとしている。

鳩山の目的は何だったのか。原発に関して、彼の口から「反原発」という政治姿勢を聞いたことは無い。国連に行って、CO2を25%削減と“公約”した。その出来もしない約束を敢えてした裏には原発依存があったからだ。原発で成り立っている彼の思いつきとも言える言動だった。

沖縄の普天間基地移設に関しても、“うそ”を通した。沖縄県民を怒りのどつぼに追い込んだ。二枚舌、三枚舌の持ち主・・・。首相を辞めたら国会議員も辞すると公言したにもかかわらず、あっさりそれを撤回する・・・。

奥さんと一緒にファッションショーに出て踊りまくったり・・・。要するに目立ちたがり屋なのだ。天性。

その性格がきのうの行動に垣間見える。集会に参加することが政治家の本分ではない。社民党党首や共産党党首ならいざしらず。総理大臣経験者だ。
もし、反原発に宗旨替えしたなら、それは国会の中で問いただし、主張すべきだし、ムードとしての反対ではなく、この国のエネルギー政策も含め、国の有り様を考え抜いて首相経験者としての発言、行動をすべきなのだ。

多くの国民が「政治不信」だという。その元を作ったのが、少なくともその一人が鳩山由紀夫という男なのだ。政治の劣化を招いた“犯人”なのだ。

一言で言う。彼のパフォーマンスは、見せかけの反原発に与することで、次回の選挙を有利に運ぼうとする浅知恵なのだと。

官邸前の反原発、大飯再稼働反対のうねり。それが純粋な国民の真意の発露の行動だとしたら、そこに邪心を持った鳩山を交えたということで。その運動の品位や存在意義さえも問われることにならないのかと。

頭に来たからボスの缶コーヒー買ってこよう。ジョーンズさんにご意見拝聴してみようかと。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...