1961年、アメリカの第35代大統領に就任したJ・F・ケネディ。彼に日本人記者から質問があった。
「尊敬する日本の政治家は誰か」と。ケネディーは即座に答えた。
「上杉鷹山だ」と。
米沢藩主だった鷹山。関ヶ原の戦いの余波を受けて、禄高を大きく減らされていた。藩は極端な財政破たん状態に陥っていた。
藩政改革に取り組んだ鷹山は、年貢の石高を極力抑え、家臣の贅をいましめ、絹の着物を木綿に変えさせた。
みずから、農作業に手を付け、数々の殖産事業をおこした。
いわば「身を切る改革」ということだろうか。領民から慕われた。下級武士も鷹山に従った。
「合衆国があなた方に何を為すかを問うな。あなた方が合衆国に何を為せるかを問え」。
ケネシーの有名な就任演説の精神は、この鷹山から影響を受けたものだという話もある。
小林虎三郎。「米百俵」の歴史を作った人。戊辰戦争後、長岡藩は石高を減らされ、武士も領民も餓えに餓えていた。
見るに見かねた親藩、三根藩が米百俵を贈った。藩士はこれで当面の飢えはしのげると思っていた。
虎三郎は米は分けないという。売って金に換え、学校を作るという。藩士からは刀を突きつけられる抗議を受ける。聞かない。
「米百俵で何日食いつなげるか。あっと言う間に無くなってしまう。学校を作って教育に充てれば、何十年後には、千俵、万俵になってかえってくる」と。
2002年、総理大臣になった小泉純一郎は所信表明演説でこの故事を引用した。
「今の痛みに耐えて明日を良くしようという米百俵の精神こそ、改革を進めようとする今の我々にとっとも必要ではないだろうか」と。
余談になるが、この米百俵のこと、長岡藩史には今も残されている。その碑もある。
三根山藩の藩史にはその記述は無い。敢えて書かなかったのだろう。米を贈ったということを。
「掛けた情けは水に流し、受けた情けは石に刻め」。そういう精神なおだろう。
改革のために何を為すべきか。国にとって一番重要なのは教育だということ。
ノーベル平和賞を受賞したマララさんは「戦車より教育」と訴えた。
日本は格差社会だ。格差の是正は教育にあると言われる。
OECDはこう分析した。「格差拡大は各国の経済成長を損なっている」と。
これを受けたイギリスの有力紙は一面トップでこう断じた。
「OECDはきょう、トリクルダウンという考え方を捨て去った」と。
貧困をもとにした教育格差は広がっている。ありていに言えば金持ちの子しか大学に行けないという実態。
我々は“先人たちの訓へ”をいくつも持っているにかかわらずだ。
そんなこんなを思いながら投票所に向かう。
2014年12月14日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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