年末年始、日常の「光景」としてあるテレビはその姿を大きく変える。
いわゆるゴールデンタイム。夜。
何時間もぶち抜きの「特番」「特番」。そのほとんどがいわゆるバラエティー番組だ。今“売れ筋”のタレントを使っての。
新聞のラ・テ欄を見る。見たい番組は皆無に等しい。年末、年始は、テレビは家庭の“主役”だ。でも、そこには見たいものが無いということ。
ニュース番組は、当然の如くにその座をバラエティーに、しかもそのほとんどが事前収録されたものに奪われる。
かつてテレビが「急成長」を遂げていた時、大宅壮一が発した言葉。
「一億総白痴化」。
至言だったのかもしれない。
だから、あの世代のテレビ人は考えた。テレビの在り様を語りあった。テレビはいかに在るべきかを。
常日頃言ってきた言葉がある。
「テレビが出来ることをテレビがやる。テレビにしか出来ないことをテレビがやる」。
もちろん以前からも大なり小なりあったことではあるが、2014年のある日、テレビは、大きな力による「恫喝」に屈した。
雪崩を打つようにテレビは、テレビ報道はつまらなくなった。
テレビは世相との合わせ鏡だ。番組だけではない。民放のCMとて然りだ。
「歌は世に連れ、世は歌に連れ」。昔歌謡番組の司会者が常用していた名セリフだ。「歌」を「テレビ」に置き換えて読み解けば分かりやすいかもしれない。
テレビの側は自らが伝えたいことを伝えているのか、伝えようとしているのか。
テレビは視聴者が見たいと思っているものを作っているのか。
能動的なのか受動的なのかという「テレビの在り方」。
視聴率というものがある。今は日本テレビ系列が「三冠王」をとっている。
視聴率とは何か。その「商品価値」だ。広告主に高く買ってもらえるかどうかの「尺度」に過ぎない。
でも、テレビは視聴率に一喜一憂する。内容が重要なのではない。何人の人が見たか見なかったかということ。広告効果があるか無いかということ。
そして、CMと言うのは、視聴者の購買意欲を掻き立てるものだけではなく、一つの文化として、その時代を「表相」するものだった。
短いCMが、その時代をうまく表現していた。
広告評論家でありコラムニストであった天野祐吉さんと言う人がいた。「CM天気図」という欄だったか。彼が毎週論じるテレビ論。軽妙洒脱な語り口。
彼の指摘は、テレビ人にとって「クスリ」でもあったのだが。
彼が亡くなってから、また、テレビは余計つまらないものになって行ったような気がする。
テレビドラマも全くつまらないものになった。映画ならまだ観る側に選択権がある。テレビはその日放送されるものしか放送しない。
テレビの存在は大きい。その影響力も大きい。
テレビ人が、それをどれくらい「自覚」しているのか。その自覚は時によっては“傲慢さ”になって登場する。
ある意味、テレビは危機的状況に置かれているのかもしれない。ネットとの関係は除外視しても。
バラエティー番組で、「お茶の間」に乾いた笑いを提供しているだけがテレビではない。
映像という手段、同時性という手段、居ながらにして接することが出来るテレビ。
何時間もテレビの前に座っていられる人は少ない。特にこの年末年始と言う時期。
テレビがやるべきことはあるはずだ。福島の事は福島の中のテレビがやっていればいいということではない。
阪神淡路大震災のその後も、沖縄の事も、8月だけのことではない広島、長崎のことも。そして、今、目の前に横たわっている「福島のこと」。
テレビがある種の執拗さをもって伝えなければ、それらは「忘却の彼方」に行ってしまうということ。
ひと時の乾いた笑いよりも、将来に向けた考える材料を提供するのもテレビの使命なのだと。
ラ・テ欄を斜め読みしながら“暗澹”たる気分にさいなまれる年の瀬・・・。
テレビで何の番組を見ますか、ではない。あなたはテレビに、そうテレビに何を見ますかということ。
2014年12月30日火曜日
“チェルノブイリ”異聞
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