田植えの季節である。ここ郡山という小都市でも、街中にいくつかの田んぼが散見される。
今年も稲作に踏み切った農家は田植えに余念が無い。
やがて緑の風景が広がるはず。
東京でも丸の内のオフイスビルの屋上で、近所の保育園の子どもたちの参加を得て、陸前高田のブランド米“たかたのゆめ”の田植えがあった。
昔ながらの姐さんかぶりの衣類にたすき掛けをした姿の女性が手助けをしていた。
平成7年、全国植樹祭に招かれた美智子皇后がこう歌を詠まれている。
「初夏(はつなつ)の光の中に苗木植うるこの子どもらに戦(いくさ)あらすな」。
「戦あらすな」。皇后はもとより天皇陛下、皇太子の願いである。美智子皇后が詠んだ、その“小さな願い”は、届かない。
戦の方向にこの国は進んでいるのだ。
天皇陛下も去年の誕生日に、それこそ言葉を選びながらも“戦争”についてこう語られている。
「先の戦争では300万を超す多くの人が亡くなりました。
その人々の死を無にすることがないよう、常により良い日本をつくる努力を続けることが、残された私どもに課せられた義務であり、後に来る時代への責任であると思います。
日本が世界の中で安定した平和で健全な国として、近隣諸国はもとよりできるだけ多くの世界の国々と、共に支え合って歩んでいけるよう切に願っています」。
明らかに“戦争”への可能性を高めようとする「安倍政権」へ向けたメッセージだった。
しかし、陛下のこの“切なる願い”も、もはや、日米同盟強化と言う大義名分に酔い、憲法の精神を逸脱するかの如きことを、なにがなんでも成し遂げようとする彼らにとっては「一顧」だにされていない。
昨日、安保法制に関わる11の法案が自公で合意された。法案は今週にも国会に提出される。
11の法案。どれをとってみてもかなりの国会審議を必要とするものばかりだ。
それが一括で、一括りで提出される。
そして今国会での成立を目指すときた。
なぜなら安倍がアメリカで大見得を切ってしまったからだ。
会期延長はあるだろう。しかし、結局は強行採決される。
国の命運にかかわることが「議会制民主主義」の場で強行採決されるということ。
国会のチェック機能と言ったって、1強他弱と揶揄される国会の勢力分野。
まして、どこを向いているのか、何を考えているのかわからない一部野党。
提出、イコール成立と「安倍政権」は“たかをくくっている”はず。
かつて安保体制の論議の焦点は「専守防衛」だった。これからは、法案が成立した暁には、とりあえず自衛隊は、アメリカのお供でどこの戦地にも行ける。
「戦争」に関しては、日米の間に、その体験や認識に於いて大いなる隔たりがあるはず。
少なくともアメリカ本土は戦争の被害を受けていない。アメリカにとっての戦争とは常にどこかに出かけて行って行われる戦争。
兵士は帰る故国を持つ戦争。
敗戦国日本。本土も焦土と化し、沖縄では言語に絶する残酷な戦争。そして原爆。
戦争とういうものについての「そもそも」の認識と経験、理解、体験が違うのだ。
認識の違うものを「同盟化」するというのは無茶な話なのだけど。
安保法制論議、今朝の新聞はどこも大きく取り上げている。それは「当然」のことだけど、どこかで“うんざり”している自分がいることに気付く。
うんざりした時に救いを求める美智子皇后の歌・・・。
「福島」にも、うんざりすることが多い。またあらためて書くが。
「笑み交わしやがて涙のわきいづる復興なりし街を行きつつ」。
美智子皇后の歌にまたも救いを求めている自分・・・。
沖縄を詠んだ昭和天皇の一句。
「思はざる病となりぬ沖縄をたづねて果たさむつとめありしを」。
2015年5月12日火曜日
“チェルノブイリ”異聞
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