リスク。英語である。Riskと書く。広辞苑には「危険」とその意味が載っている。別の辞書には「危険。危険度。損害を受ける可能性」とある。さらに「自然現象や人間の行為が、人間の生命、財産、生存環境などに損害を与える恐れがあること」と書かれている。
危険と言う英語にはデンジャー、dangerという言葉もある。英和辞典で引くと、「程度のいかんを問わず、危険の意味をあらわすもっとも一般的な語」とあり「リスクは自己の責任において犯す冒険」とある。
リスク。今、世の中のもっとも氾濫している言葉だ。
その意味は誰も全くわからないわけでは無い。でも、その意味や内容は漠然としたものであり、曖昧なものであり、取りようによって、使い方によっていささかおもむきが違ってくるものでもある。
余りにも「一般化」され、誰しもが概念としてとらえている言葉だから、それを使っているのだろうが、どうも“違和感”があるのだ。
一般的と言うことばにしてもそうだが。
安保法制をめぐる国会論議。質問者も答弁者も「リスク」を多用する。
「リスクは残るが、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、自衛隊員には負ってもらうものだ」。安倍の自衛隊員のリスクについての答弁。
「日米同盟を強化する。それにより抑止力が高まれば、日本が攻撃を受けるリスクは一層下がる」。
「法整備により得られる国全体、国民のリスクが下がる効果は非常に大きい」。これらも安倍の答弁。
ここにあるリスクとは“生命、財産、生存環境が損害を受ける可能性”ということなのだろう。
自衛隊員のリスク。国民のリスク。
中谷防衛大臣は「撤退するからリオクは無い」というような発言をする。派遣された自衛隊員について。
リスクの有る無し。どこか答弁が食い違う。野党はどうも攻撃の目標を防衛大臣に据えたようだ。だから、安倍は中谷に対する質問にも自分にむけてでは無いのに、答弁を買ってです。「こいつはこころもとない」とでもいわんばかりに。
安倍の“野望”の前に中谷のクビも危ないのではないかと思わせるような光景。
「リスク」というわかっているようで誰もわかっていない言葉の応酬。だから余計にこの法制や議論を分かりづらくしているような。
だから「漠然とした言葉のやりとり」とも思われてしまう。
言葉が命のメディアにしても然りだ。「当然の日本語」のように連日、あらゆることにリスク、リスクという「カタカナ」が登場する。
リスク社会を生きるから始まって、ネット社会のリスク、車社会のリスク、空き家のリスク・・・。挙げればきりがない。
原発のリスク。この言葉も誰しもが使う。そこでいわれるリスクなることには、さまざまなケースが存在している。
“一括りのレッテル貼り”じゃいけないんだけど。ま、安倍の言を借りればだけど。
直接被ばくによる作業員のリスク。間接被ばくというか内部被ばくによる「健康へのリスク」。
生存環境が損なわれたというリスク。
膨大な費用を要するカネのリスク。あらゆる生命体へのリスク。
そうなんだよな。簡単な「カタカナ語」に収斂されてしまっている「日本を語る言葉」。
リスクという言葉の実態が曖昧模糊だ。
ストレスというカタカナ語でもそうだ。曖昧模糊とした言葉の中に全ての解決をさせてしまう。
国の将来を決めてしまう法案の審議でほとんどの議員が居眠りしている「リスク」。本会議を抜け出し、議場の外で談笑したり、スマホをいじっている議員が多いと言う「議会制民主主義が崩壊寸前」というリスク。
ま、ありきたりのことで言ってしまえば、安倍が最高権力者(自称)である限り、アベノリスクはついてまわるのだけど。
ついでに言ってしまえば言語の対米追随だ。
言葉を出汁にした笑い話にするのはよくないこととは承知の上で。
2015年5月28日木曜日
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