ヒロシくん、事務所の近くのワタナベさんが引き取った被災犬である。もとの名前はわからない。被災地に行って引き取ってきたワタナベさんが勝手につけた名前。
ヒロヒクンはすっかりその名前が気にいっているらしい。「ひろしくん」と呼びかけると尻尾を振って挨拶してくれるから。
きょうの郡山は朝から快晴。今は気温2度。雪の名残が残る道を、走ってくるヒロシと出会った。走っている。ワタナベさんと一緒に。じゃれつきながら走っていく。ボクとの挨拶もそこそこに。嬉しいんだな。
ワタナベさんはヒロシくんのリードを放さない。しっかり握っている。リード、それは「絆」の語源。ワタナベさんとヒロシくんの間には「絆」が厳然として存在している。ここだけには。
瓦礫処理の問題ひとつにしてもそう。「絆」という字は、意味を持たない単なる「字」としてしか存在しなくなった今の日本。いや、それは言いすぎだ。
被災地をめぐる個々の絆はある。生まれる。社会全体としては・・・。ない。
キーボードの脇にある澪の写真に見入る。ずっとこっちを見ている。いつものように。「何をしているの」と問いかけているような。
澪とは毎日走った。雪の日も走った。雪の中を駆ける澪の雄姿は美しかった。懸命に後を追うゲンキはたまらなく可愛かった。
雪の川内村や、冬の警戒区域。まだ犬がいるという。いや、犬だけではあるまい。ネコもいるかも。馬は。豚は。牛は。寒さをしのいでいるはず。
川内村。凍てついた道。たまたま通りかかった車に犬が寄ってくるという。尻尾を振りながら。飢えているのだと。車を見れば必ず姿をあらわすという。飢えているのだ。食物にも人の愛情にも。
犬や猫や馬は放射線のことはわからない。知らない。知っているのは突然神隠しにあったように消えてしまった飼い主のこと。
多くのペットが“救出”されたというが、全てではない。
久しぶりの晴れ間。ヒロシくん、走れ、駆けろ。大丈夫だ、外気をいっぱい吸い込め。君が走ればワタナベさんもいくらか痩せるかも。
復興庁が出来た。大臣は福島再生をメインにあげる。マスコミはけなす。寄せ集めで何が出来るのか。縦割りを壊せないなどと。その役所のは期待できないと。不信をあおる。何の意味があるのか。
F2の内部が公開された。「紙一重だった」と所長は言う。
テレビのキャスターはしたり顔で言う。「今、この時期に公開する意味ってなんでしょうかね。思わず裏に何かある、思惑を考えてしまいます」と。
じゃ言え。考えた内容を。語れないくせに。裏を言え。
不信をあおる。不信の連鎖。そこからは何も生まれないと思うのだが。
ヒロシ君はワタナベさんを信頼しきっている・・・。明日で11カ月・・・。
2012年2月10日金曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
地に墜ちた「天下のご政道」。
菅義偉という“無能”な政治家が、何かの手練手管を使ったのか、とにかく内閣総理大臣という「天下人」に昇りつめた。 最近の総務省の役人を菅の長男による「接待疑惑」が報道され予算委でも疑惑がやり玉にあがっている。長男が勤務している「東北新社」の名前を久しぶりに聞いた。 創業...

-
1945年6月6日。沖縄根拠地隊司令官の太田實中将は本土の海軍次官に宛て打電した。 “本職の知れる範囲に於いては、県民は青壮年の全部を防衛召集に捧げ、残る老幼婦女子のみが、相次ぐ砲爆撃に家屋と財産の全部を焼却せられ、僅かに身を以って軍の作戦に差し支えなき場所の小防空壕に避難、...
-
東日本大震災から8年だ。毎年考えて来たのが「復興」という言葉、その事象。 未だもって、「復興」を言う言葉には“わだかまり”があり、自分の中で“消化”されていない。納得できる“回答”を持っていないのだ。 今も「3・11」は続いている・・・。 勤労統計の“偽装”は、この国の根...
-
昔、佐藤栄作が内閣総理大臣だった時、官房長官をつとめていた人に橋本登美三郎という人がいた。富ヶ谷に大きな家を構えていた。 富さんという愛称で呼ばれていた。茨城県選出の議員。もともとは朝日新聞記者。南京支局長の経歴もある。 富さんの後援会は「西湖会」と言った。富さんは朝日新聞...

0 件のコメント:
コメントを投稿