2012年2月10日金曜日

「ヒロシくん」が走って行った・・・

ヒロシくん、事務所の近くのワタナベさんが引き取った被災犬である。もとの名前はわからない。被災地に行って引き取ってきたワタナベさんが勝手につけた名前。

ヒロヒクンはすっかりその名前が気にいっているらしい。「ひろしくん」と呼びかけると尻尾を振って挨拶してくれるから。

きょうの郡山は朝から快晴。今は気温2度。雪の名残が残る道を、走ってくるヒロシと出会った。走っている。ワタナベさんと一緒に。じゃれつきながら走っていく。ボクとの挨拶もそこそこに。嬉しいんだな。

ワタナベさんはヒロシくんのリードを放さない。しっかり握っている。リード、それは「絆」の語源。ワタナベさんとヒロシくんの間には「絆」が厳然として存在している。ここだけには。

瓦礫処理の問題ひとつにしてもそう。「絆」という字は、意味を持たない単なる「字」としてしか存在しなくなった今の日本。いや、それは言いすぎだ。
被災地をめぐる個々の絆はある。生まれる。社会全体としては・・・。ない。

キーボードの脇にある澪の写真に見入る。ずっとこっちを見ている。いつものように。「何をしているの」と問いかけているような。

澪とは毎日走った。雪の日も走った。雪の中を駆ける澪の雄姿は美しかった。懸命に後を追うゲンキはたまらなく可愛かった。

雪の川内村や、冬の警戒区域。まだ犬がいるという。いや、犬だけではあるまい。ネコもいるかも。馬は。豚は。牛は。寒さをしのいでいるはず。

川内村。凍てついた道。たまたま通りかかった車に犬が寄ってくるという。尻尾を振りながら。飢えているのだと。車を見れば必ず姿をあらわすという。飢えているのだ。食物にも人の愛情にも。

犬や猫や馬は放射線のことはわからない。知らない。知っているのは突然神隠しにあったように消えてしまった飼い主のこと。

多くのペットが“救出”されたというが、全てではない。

久しぶりの晴れ間。ヒロシくん、走れ、駆けろ。大丈夫だ、外気をいっぱい吸い込め。君が走ればワタナベさんもいくらか痩せるかも。

復興庁が出来た。大臣は福島再生をメインにあげる。マスコミはけなす。寄せ集めで何が出来るのか。縦割りを壊せないなどと。その役所のは期待できないと。不信をあおる。何の意味があるのか。

F2の内部が公開された。「紙一重だった」と所長は言う。

テレビのキャスターはしたり顔で言う。「今、この時期に公開する意味ってなんでしょうかね。思わず裏に何かある、思惑を考えてしまいます」と。
じゃ言え。考えた内容を。語れないくせに。裏を言え。

不信をあおる。不信の連鎖。そこからは何も生まれないと思うのだが。

ヒロシ君はワタナベさんを信頼しきっている・・・。明日で11カ月・・・。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...