3・11以前、この国の有り様を語るためにメディアはいろんな言葉を使い、時代の様相をひとくくりにしていた。
例えば、無縁社会だの孤族だの。ニートだのロスジェネだの。
大地を揺るがす大きな地震、すべてを呑み込んだ津波。そして原発の爆発。
社会をひとくくりで語る言葉は無くなった。
無縁社会だったのが、絆という言葉にとって代わられ、地域コミュニティーが叫ばれ・・・。
閉塞感という言葉も“流行”していた。例えば政権交代も“閉塞感”を打破したいという民意だったとか。
その閉塞感という言葉も姿を消していた。もともとこの言葉。何に対しての、どんな閉塞感という記述が無いもの。漠然とした「空気」をさしていたものだったから。
最近、この閉塞感という言葉が“復活”してきた。事件があると、その解説で言う。「背景には閉塞感があるんでしょうね」とか。
原発反対運動。3・11前までは、一部政党や、団体に組織化された人達、そして理念を共有する人たちだけのものだった。
しかし、今は様相を一変させた。実害はともかく、放射能汚染という事実は、あらゆる国民の中に反対の機運を盛り上げ、さまざまな運動へと向かわせている。
これらの小市民的運動を、やはり「閉塞感の打破」という言葉でくくろうとする人達もいる。
原発と閉塞感と。閉塞感を身にしみて味わっている人達は、仮設に暮らす「原発避難民」。せまい部屋に閉じこもり。
この季節の冷たい雨・・・。家から出ることがためらわれる雨。頭の中にはいろいろなことが駆け巡るが、亭主の気分ももしかしたら「閉塞感」かも。
仮設の窓から見える景色は、また仮設。雨があがったら寒いだろうが表に出て見てください。
少なくとも郡山にある仮設はちょっと歩を運べば山が見える。山をみて少しは閉塞した気持ちを忘れて下さい。
晴れたら空を見てください。あなた達が暮らしていた村や町と同じような「ほんとうの空」が見えるから。
♪晴れた日には永遠が見える♪。亭主が若いころによく聴いていたジャズの一品。永遠。Forever。今の暮らしが永遠に続くものでないことを願って・・・。
それにしても、この多様で、複雑な世の中を、たった数文字の言葉で括って、世相を言い当てたかのようにいう「識者」達。一つの言葉ではくくれません。
被災者の心の内は。
“チェルノブイリ”異聞
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