1年365日。この季節は「お盆」。盂蘭盆会。「お」という丁寧語をつけて、その季節を大事にする。死者が家に帰ってくるという。魂が。それが帰るばあ所を間違わないように、提灯をともしたり、迎え火を炊いたり。
お盆の時期は里帰り。何にも増して優先されるお盆と言う行事。日本の伝統的精神文化の発露ということなんでしょうか。
帰省ラッシュのニュースが伝えられ、行楽地に向かう人たちの様子が伝えられ。
都心からは人が消え・・・。
郡山では「盆花(ぼんばな)」といういいならわしが。花市が開かれ、多くの人たちが花を買い求め。お線香を手に、墓参にいきます。墓地周辺は人が、人が・・・。
帰って来た死者と対話出来るのか。心の会話があるのか。死者の声が聞こえるのか。もし聞けるなら、3・11で亡くなった、多くの死者の声を聞きたい。突然家族を亡くした方々には、その思いはより強いのでしょう。
盆花を二つ求めてきました。一つは仏壇へ。母や祖母の位牌がある仏壇へ。
そして、もう一つは、先日亡くなった仮設に住む、いや住んでいたじいちゃんの家へ。病院で迎えた死ではあったけれど、川内村から郡山に避難させられ、いわば異郷の地で死を迎えた。彼の思いはいかばかりだったのか・・・。
原発避難区域。先日警戒区域が解除された楢葉町。立ち入り自由。多くの人たちが墓参に帰っています。墓を掃除し、花と線香を手向け。
“田舎”に行けば行くほど、先祖というものに対する思いは強い。その「御先祖さま」に対する理屈を超えた思い。それを、3・11で再認識しました。
位牌だけ持って逃げた人、一時帰宅を許された時に、まず仏壇に行って先祖に詫び、位牌を避難先に持って行く人・・・。
先祖とは何なのか。土着信仰、土俗信仰、土に生きてきた人達の、生者の支えとなるものなのか。
楢葉町の場合、お盆の時期に合わせた警戒区域解除だったのか。それにしても。出入りは自由、しかし宿泊は出来ない。寝泊まりできてこその家。
なぜ、宿泊してはいけないのか。その理由がいまいちわかりません。自分の家に寝て、罪科(つみとが)に問われると言うことか。
「福島の人はなんでもっと怒らないのか」。そんな声をよく聞きます。東北人は怒らない、じっと我慢ばかりしてる。そんな声も聞きます。
怒りを表現するにはさまざまな表現があります。大きな声をあげてデモをするのも怒り。それは形としては大きいものに見えます。
片や静かな怒り、黙した怒りもあります。大声をあげて面罵するよりも、相手の目をじっと見据え、その眼に怒りの感情をみなぎらせる・・・。
お盆に帰ってきた死者の眼には、もしかしたら、その魂に、怒りの感情が込められているかもしれない。
避難してきている人たちと話をした時、話している時、伝わってくるその静かな怒り。
その静かな怒りの方が、あらゆる意味で強い力を持っているのではないかということも。
灼熱の太陽のもと、日本列島を覆っている「お盆」。それは、楽しくもあり、嬉しくもあり、なによりも悲しくもあり・・・。
盂蘭盆会。梵語のウランバナという言葉だという。その謂われ、意味は「さかさまに吊るされて様な苦しみを取り除くための行為」だともいわれる。
であれば、今、吊るされてような苦しみの中にいる生者達のためにも、お盆はあるものかもしれない・・・・と。
静かにそう思う。
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