2013年3月9日土曜日

「風化する」それは当然なのだ

風化させないために・・・とメディアは言う。
もう風化していますね・・・と都会の人は言う。
風化して行くのが辛いです・・・と被災地の人は言う。

「風化」とは何を指すのか。何なのか。記憶とするなら、それは薄らぐのは当然だ。同じ気持ちだというなら、人の心は移ろうものだ。

一般的空気としての風化。それは当然あり得ることなのだ。卑近な例をとろう。首相官邸前で行われていた「反原発デモ」だって、その参加人数と言うことでいえば、すでに風化の兆しが見えているのだから。

「3・11」。この国が“崩壊”した時。それを風化させてはいけない。当然だ。
風化させないためにと、マスコミは、それこそ横並びになって一斉に、その事を伝え始める。

敢えて意地悪く言おう。風化しているのは自分たちだから、それを指弾されることを恐れての、一斉、横並び報道だと。

だから、“節目”になると、特集を組み、読み切れないくらいの量の関連記事を書き、どこを見ればいいのか、その人の視聴時間、能力は限られているのに、震災、原発関連報道がなされる。

なぜだかしらぬが、それが正しい手法だと思っているのだろう。キャスターやレポーター、コメンテーターが、必ずと言っていいほど「現地入り」をする。そして被災地の人たちに、心底、心を寄せているかのごとく振る舞い、“同情”の言葉を発して行く。時は的外れな物まで。

地元紙を手にして、「こんな現状を東京の人は知らない」と言い、伝えられていない「ローカル」に心を寄せ、新発見の如く言う。
ネット社会だ。東京にいてもローカル紙はいくらでも目にすることは出来るのに。

被災地の声を拾い、そこの人達を追いかけまわすような。まさに「メディアスクラム」の如き感。
「風化させないため」。それは自分たちの自己弁護だ。欺瞞だとも思える。

原発事故。格好のネタだ。テレビは映像を伴って言う。東京の煌々たる灯りを映しながら。

あの時の節電意識はどうなったのでしょう・・と言った具合の主張を。そして、自らの主戦場である東京を悪しざまに言う。

日本中を覆っていた、あの節電ムード。まさに、高度経済成長に別れを告げ、電気漬けのライフスタイルを一変される千載一遇の好機だったのに。
あれは「変わろう」とする意識の萌芽ではなかったのだ。計画停電という電力会社のお達しにおそれおののいた時の政府や、それに乗せられたメディアが、そう、今ではお笑い草か。「電気予報」なんて言うのを流していた・・・。

電気漬けの電気まみれの、快適で便利で豊かな生活に自然に戻って行ったということ。

メディアは大量の人や機材を投入して、2年の節目に当たる、現地を伝えることに腐心して、風化の本質には迫らない。この国を全体的に見た時、伝えるのは月日の経過に伴う現地の様子や、未だ苦しみ悶える人たちの今を言う事ではないはずだと思うのだが。

マスコミはまだ、それでもいい。本当に「風化」させてしまっている、あるいは「風化」を待っている。それは“政治”なのだ。

風化するのは当然だ。当たり前だ。

遅々として進まぬ原発事故の処理、対処。風化させまいとするマスコミと風化を肌で感じている“当事者”との乖離は増すような。

津波で家族を失った人たちの悲しみは癒えない。その人たちの間では、何も風化していない。
私事で恐縮だが、あの戦災を目の当たりにし、多くの人の死を子供ながらに見、「貧しい」生活を送ってきたボクの中では、戦災は全く風化していない。

これからも毎年、節目にはテレビはあの日の映像を流すだろう。風化させないための記録は山ほど残っているのだから。

被災地入りしたキャスターやレポーターは、そこで見たことを今後どう己の職業意識の中に生かせていけるのか。

「風化」を悪しざまに言い、我々は違うんだよと言わんばかりのメディアの人たちよ。「風化」という人間の心の中にある、ある意味当然の帰結にあなたたちはどう立ち向かえるのか。

3・11以降・・・あの避難所の段ボールハウスがボクの中の“原点”の一つとしてある。ボクの心の中では何も風化していない。いや、風化してくれればいいのだとも思う。風化しない限り、ボクの頭の中の苦悶は何処にも行ってくれない。

だから…愚にも付かないと思われるような事まで、毎日、書き連ねている。あくまでも自分自身の問題として。

だから、辛い日々を送る被災地の方々よ。風化を恐れるな。当然と思おう。それに立ち向かう何かを見つけようよ。3年目を迎えるための心の準備としても。

風化は当然なのだ。人は、いつも、同じ気持ちではいられないものなのだから。当事者以外は。

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