2013年12月15日日曜日

それぞれの「都合」、それぞれの「事情」

「都合」、全く持って都合のいい言葉がある。
会合の案内を出す。「都合がつかず欠席」と返事がくる。なんだかわからないが“都合”という一言に皆納得してしまう魔法のような言葉。

またも辞書。都合―。
「その折の状況や事情」。「金品や時間のやりくり、工面」。「全部まとめて合計」。と書かれている。

因みに「不都合」-。都合が悪いこと。道理に合わない事。けしからぬこと。
因みに「好都合」-。条件・要求などにかなっていて、都合がよいこと。
因みに「御都合主義」-。定見を持たず、その場の状況に応じて自分の都合のよいように行動する態度。オポチュニズム。

東京の初台に親しくしていた92歳のご婦人がいる。先日脳梗塞で倒れた。幸い、民生委員のような、町の高齢者見回り隊の人がかけつけ、何時間経っていたかはわからないが救急車で入院。かろうじて一命は取り留めた。たぶん、娑婆への復帰は不可能だろう。いくらか快方にむかっているとはいえ、喋れない、手足が思うように動けない・・・。

親戚がいる。甥か姪か。病院から今後のことについて相談がと連絡する。「都合がつかなく、いろいろ事情があってその日には行けません」となる。病院は最初に同行した“見回り隊”の人に連絡する。「なんとか都合をつけて来てください」と・・・。仕事をやりくりしてその人は病院に行く・・・。

「都合」「事情」。その言葉でしか言えない状況下で、暮らしている福島の人たちがいる。

家族の事情、主人の仕事の都合で、離れ離れに暮らす人達。避難区域にもかかわらず、そこの「ホーム」に居ざるを得ず、また、そこが一番いいという介護老人。避難した家族は、それぞれ「都合」があってこられないし、引き取れない。

それぞれに、それぞれの事情があり、それぞれに、それぞれの都合がある。その都合や事情の内容ははっきりしているような、していないような中・・・。

「都合により、当分営業を中止します」。そんな張り紙が貼られたままの帰還困難区域。なぜ「原発事故により」と書かないのか。
おくゆかしさなのか。

「諸般の事情により、閉店します」。諸般じゃない。原発事故そのものなのに。

そして“被災地”には、多くの政府の「都合」が押し付けられ、その都合に人々は翻弄される。

その都合にはカネの“やりくり”も含まれている。

「あなたがたにとっての好都合は、我々にとては不都合なのだ」。

都合よく使われる「都合」という言葉。その言葉は、使われ方に、きっと戸惑っているのだろう。

そして「特定秘密保護法」。様々な疑問点や曖昧さを内蔵しながら、それはきっと「時の政府」の“都合”により、“事情”により、好都合な法律として運用されていくのだろう。
ごめんだね。こっちにとっては「不都合」なんだよ。道理に合わない、けしからんことなのだよ。

「不都合な真実」。原発事故でも度々言われた言葉。その「不都合な真実」は隠し続けられている。

そして“委縮”し始めた民は、不都合な真実ですら、暴くことに躊躇しはじめている。

晴れた冬空が白銀の世界に眩しい。その空とて、なにか重苦しさを伴って感じられる。

「3・11」がもたらしたもの。それを根本から考えなおさないといけない時なのかも。
自然と人間の営みの“因果関係”含め。

この国はやはり、大きな曲がり角に来ていると思う。何にしても・・・。

“チェルノブイリ”異聞

  ロシアがウクライナに侵攻し、またも多くの市民、日常が奪われて行く。 ウクライナという言葉、キエフという言葉、チェルノブイリ・・・。 そう、あの最大の原発事故を起こした地名の幾つか。 「チェルノブイリ原発事故」。1986年4月26日。 ウクライナの北部にあるその...