数日前から、書棚で光を放ているような本があった。吸い寄せられるように、その黄ばんだ本を手に取り読み返す。
3・11で「破壊」された書棚。廃棄処分にせざるを得なかった本の中で生き残っていた一冊。この日に読み返されることを望んでいたかのような。
沢木耕太郎が1953年に書いたノンフィクション。右翼の青年、山口二矢が社会党の浅沼稲次郎を日比谷公会堂で刺殺したテロ事件のこと。
その後も、右翼による野村秋介らによる“テロ事件”はあったが、浅沼事件ほど衝撃を与えた事件はなかったように思う。映像はその瞬間を捉えていたし・・・。
一昨年、ボクは書いた。大震災、津波、原発事故。それになんらの対応の出来ず右往左往している政府。原発があれほどの悲惨な事故であり、とてつもない被害を与えているというのに、再稼働を言う権力。それに対して、ある種の「テロ」を予感した。なぜテロが起きないのかとも論じた。ある種のテロへの“期待”も言った。そう、テロが起きてもおかしくなかった状況だったと感じたから。
そのテロとは思想を背景にしたものでは決してない。怒りの発露としての“テロ”。しかし、それはなかった。そして美徳だけが、美しい話だけが伝えられていた。
官邸を「再稼働反対」の鳴り物を携えたデモ隊は包囲していた時もあった。それには常に疑義を抱いて見ていたが。運動のための運動に見えたから。そしてそれはテロリズムとは無縁のものであったから。
その再稼働反対デモは、今、特定秘密保護法反対のデモに昇華している。
今週、国会はどういう展開になるのか。強行採決に行くのか、引くのか。
これほど多くの国民が反対を言う法案もなかろう。もっとも、中には、依然として無関心、知らないという人がいることも事実だが。
辞書を引く。テロルとは「暴力を手段にして敵対者を威嚇すること」とある。
テロとは「テロル、テロリズムの略」とある。
テロリズムとは「政治的目的を実現するために暗殺・暴力・破壊活動などの恐怖手段や、その脅威に訴えることを是とする主義」とある。
国会を取り巻き、各所で行われている、それは澎湃として湧き上がるかもしれない特定秘密法案への反対行動。それが「テロル」という辞書の言葉に該当しているか。していない。
特定秘密保護法案の第12条にはテロリズムに関しての定義が書かれている。
テロリズム(政治上そのたの主義主張に基づき、国家もしくは他人にこれを強要し、または社会に不安もしくは恐怖を与える目的で人を殺傷し、または重要な施設その他のものを破壊するための活動を言う)。
つまり括弧の中はテロリズムというものの“説明”。政府としての見解。
秘密保護法反対デモがこれにすら該当するのか。しない。しかるに石破茂は言った。ブログに書いていた。「主義主張を実現したければ、民主主義に従って、一人でも理解者を増やし、支持の輪を広げるべきなのであって、単なる絶叫戦術はテロ行為と、その本質にあまり変わらないように思えます」。
ブログの書き出しは、今も議員会館の外では・・・。議員会館にそれほど“騒音”が届いているのかい。二重サッシの窓ガラスを越えて。
自民党の幹事長室、国会の奥。しかも面しているのはデモとは一番遠い場所。
ブログへの批判が多かったせいか。二日後には講演で言いわけを始めた。
「もし表現に足らざるところがあるならお詫びしなければならない」。「テロと同じとみたと受け取られる部分があったとすれば、そこは撤回させていただく」と記者会見で。
ふざけんなよ。石破には多少の好意をもっていたが、やめた。
博識の石破なら知っているだろう。
「綸言汗の如し」という言葉を。
撤回で事を済ませてはいけない。撤回を求め、それに応じると、許すという風潮がある。ばかばかしい。許せないものは許せない。
撤回するのは発言でなく法案そのものだ。
もう一つの辞書を引く。テロリズムの項にこういう一行も記されている。
「恐怖政治」と。
そうなのだ、この法案自体が国家の国民に対するテロ行為なのだ。
撤回こそが決算に値することかも。
2013年12月2日月曜日
“チェルノブイリ”異聞
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