春の陽気のせいなのか。ふと浮かんだ夏目漱石の「草枕」の一節。
「山路を登りながら、こう考えた。
智に働けば角が立つ。情に棹さしゃ流される。意地を通せば窮屈だ。とかくこの世は住みにくい。
人の世を作ったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣にちらちらするただの人である。
ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す国はあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。
人でなしの国は、人の世よりもなお住みにくかろう」。
情に棹さす。流れに棹さす。その意味を巡って“議論”したっけな。若いころ、中学生の頃。
あらためた噛みしめてみると、さすがは漱石先生。うまいことをおっしゃっている。慧眼だ。
そっくりそのまま今の世相だとも。
“智に働けば角が立つ。情に棹さしゃ流される。意地を通せば窮屈だ”。そうなんだよな今の世の中。
漱石先生は山を登りながら考えたらしいが、平地を歩いていてもそう感じるぜ。
だいたい、草枕なんて呑気なことも言ってられないし。
そうだよ、草枕なんて言葉はもう「死語」になっているかもしれないし。
桜、桜、花見の季節。見上げる桜花は華麗だが、その足元は・・・。
土、土、土。寝転んで見上げるわけにはいかない。
家の近所の公園。除染で芝生がはぎとられたまま。なんとも潤いの無い光景ばかりなんですよ。
“水と緑の郡山”てのがキャッチフレーズだたんですがね。
新聞読んでもテレビを見ていてもなにやら腹の立つようなことばかり。
今日腹が煮えくり返るのは政府が閣議決定した「新エネルギー基本計画」。
原案にあった前文には、それでもフクシマに対する反省があった。
“東京電力福島第一原子力発電所の事故は、我が国の社会に対して、甚大な被害を与えた。
政府及び原子力事業者は、いわゆる安全神話に陥り、十分な過酷事故への対応が出来ず、このような悲惨な事態を防ぐことができなかったことへの深い反省を一時たりとも放念してはならない“。
そんな文言どこにも無い。「フクシマ」は無かったことにされている。そう断じざるを得ない。憲法解釈の変更問題にしても、武器輸出三原則の問題にしても、
政権は、この国をどういう国にしようとしているのか。
新ネルギー計画。たぶん、国際社会の笑いものになると思う。懲りてない国として。
ただひたすら“わが道をゆく”。
今日は桜を観る会だったとか・・・。桜の花もほころび、「坊ちゃん」の笑顔もほころぶ。
角が立とうと流されようと、窮屈であろうと、まだこの国は、人でなしの国にはなってもらいたくは無い。
住みにくい世を住みやすく・・・。
“大臣の肩は数百万人の足をささえている。背中には重い天下がおぶさっている”。
「物言わぬは腹ふくるるわざなり」って兼好法師は書いていたけれど、漱石先生の言う「存分食えばあとが不愉快だ」お言葉あれど、もう少し、物申していかねばならぬ、ってことかな。
毎晩寝苦しいのは「枕」のせいかもしれない・・・。
2014年4月12日土曜日
“チェルノブイリ”異聞
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