郡山の児童詩誌「青い窓」。その創設者だった佐藤浩さん。元は学校の先生だった。宗教に造詣の深い人だった。
浩さんは亡くなったが、その灯は今も受け継がれている。
その佐藤先生が言った言葉の一つに「子どもは土を見る。大人は土地を見る」というのがある。
子どもは純粋に土に触れ、土を観察し、土の中にいる生き物を友達にする。
大人はお金を友達にしてしまった。土地を見るとは土地の価格を見るということ。
今、語られた言葉ではない。たぶんバブルの頃だったろうか。この言葉はこんな子供の詩に、小学校2年生の子の詩に触発されて生まれたのだという。
「土の中」
みみずのす
せみのようちゅうのす
かぶと虫のようちゅうのす
ありのす
もぐらのいえ
土の中は
まるで 大きなアパートのようだ
そうなんだよな。子供の言うアパートとは、いろんな生き物が住んでいるということなんだよな。
大人はそこにマンションを建てる。土をコンクリートで固め、基礎を打ち、瀟洒なマンションを。
土が確実に減っている。土のある光景が。コンクリートやU字溝。生き物の生態系は確実に変わっていく。「生き残った土」は放射能というコンクリートで覆われた科学の粋を集めた中で作られたもので汚染される。
農民の土も奪われた。笑ってはいけないけれど高層マンションに住む人は土を恋しがる。
皮肉な光景。
河川の堤防。防災のためにといって護岸工事でコンクリに覆われる。
津波で被害を受けたところにはコンクリートの巨大防潮堤が作られていく。
なんだかおかしいのだ。
中学生の時、生意気にも、長塚節の「土」という小説に挑んだ。難解な文章。
要は農民の労苦を、結論があるようなないようなかたちで書いたもの。
近々、我が家にも除染なるものがやってくるらしい。土ははがされ袋に入れて埋められる。
我が家では飼っていた犬が他界すると記念に樹を植える。思い出に。
初台からごっそりその樹を運んできて植えてある。
月下美人・金木犀・ひめかずら・うつぎ・郡山で植えた柊木犀。
除染の前に、どこかうまいこと、しまわないと・・・。
金子みすずが書いていた。「土」という詩を。
こッつん こッつん 打(ぶ)たれる土は
よい畠になって よい麦生むよ。
朝から晩まで 踏まれる土は
よい路になって
車を通すよ。
打たれぬ土は 踏まれぬ土は 要らない土か。
いえいえそれは 名のない草の お宿をするのよ。
桜の季節が終わり、名の無い草や名のある花の季節になった・・・。
土の匂いを懐かしむ。
2014年4月26日土曜日
“チェルノブイリ”異聞
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