ここ二十年以上、漫画はほとんど接していない。麻生太郎のような好事家ではないし。
のらくろ、冒険ダン吉、ターザン、海底二万哩、そしてサザエさん。子供の頃よく読んだ漫画だった。
裸足のゲンも読んだ。
ゴルゴ13に熱中し、釣りバカ日誌にのめり込み、子連れ狼にはまり・・・。そうそう、あしたのジョーもよかった。
子連れ狼は勉強になった。
美味しんぼという漫画雑誌の連載があるという。そこで原発事故に由来する鼻血のことが話題になっているとか。
作者の雁屋哲という人は“由緒正しき”経歴の持ち主。
漫画では原発現場に取材に行ったジャーナリストが鼻血が出るようになったとか全身倦怠に襲われたとある。
そして当時の町長も「私も鼻血が出ます。今度立候補を取りやめたのは疲労感が耐え難いまでになったからです」と言っている。
新聞記事によれば、筆者は、2011年11月〜13年5月に福島第1原発の敷地内などを取材したことを明かし、「帰って夕食を食べている時に、突然鼻血が出て止まらなくなった」「同行したスタッフも鼻血と倦怠(けんたい)感に悩まされていた」などと語っていた。
ということだ。
当の井戸川町長も新聞社の取材に「雁屋さんから取材されて答えたことがそのまま描かれている。(描写や吹き出しの文章は)本当のことで、それ以上のコメントはない」と話した。
たしかに被ばくしてそうなったとは漫画には描かれていない。巧妙な手口だ。
「風評被害を助長する」という多くの抗議に対して、ビッグコミックスピリッツという雑誌を出している小学館は、「そんな意図は毛頭ない」と言い訳たらたらのコメント。
福島県への風評被害についても「作中で食品検査はきちんと行われており、安心安全は食品を無理解で買わないのは消費者にとっても損失ですと述べている」とも。
風評被害だけではない。これは侮辱であり、デマの流布だ。
そんな漫画を掲載すること自体が。作者と編集者、出版社の幹部とどういう意図のすり合わせがあったのかわからないが。
“双葉から離れて”というドキュメンタリー映画がある。双葉町民が避難してきた埼玉県の騎西高校校舎を舞台にした。そこには井戸川町長も何度も“出演”している。そこで「鼻血」の血の字も語られていない。
原発事故後、あれだけ話題になった、問題視された子供の鼻血の症状のこと。甲状腺被ばくの顕著な症例とまで言われたこと。
それは全く話には出てこない。
双葉の人も、富岡の人も、浪江の人も、大熊の人も知っている。知人がいる。「3・11」について話をする。接した限りの人で鼻血を出した人のことは聞いていない。
まして、食品を生産する30キロ圏外、郡山ででも、周りに鼻血を出した子供のこと、大人のこと、それが止まらなくなったという人はいない。
最近、鼻血が出た。鼻毛を切ろうとしたはさみで傷つけたから。鼻炎で鼻をかみすぎて粘膜が切れたから。
60年も前、子供は常に鼻血を出していた。年中鼻血だった。鼻の穴にちり紙を丸めて入れておいてしばらくすると止まった。
鼻血が出ると首を後ろにそらせて首筋をトントンとたたかれた。それで終わり。
高校時代、ラグビーでぶつかって鼻血があふれるように出た。やはり首筋トントン。
チョコレートを食べすぎると鼻血が出るといわれた。十代後半の鼻血は「青春のシンボル」だった。
今、タケノコの季節。精が強いから食べすぎると鼻血が出ると教わってきた。子供の頃。美味しいものを食べすぎるから鼻血が出るんだぞと漫画誌に言いたい。
「いちえふ」という漫画もある。モーニングという漫画誌に載っている。原発作業員を経験した人の描いた漫画。事実を淡々と描いている。作業員の日常を。
ハッピーさんという漫画の登場人物のようなHNで毎日のようにつぶやいている作業員。そこにも鼻血の記述は無い。
少しは考えろよな。“活動家”のようなこともしている漫画家さんよ。漫画の影響は大きいらしいから。元総理だって感化されるくらいなんだから。
2014年4月30日水曜日
“チェルノブイリ”異聞
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