事務所の二軒隣にナオミさんという女性がいる。住居兼職場。建築デザイナーだとか。
聞くところによると相当の酒豪らしい。
すごい行動力のある女性だ。
あの年、彼女は南相馬に向かった。「迷子」になった犬や猫を救出するために。
動物擁護支援団体と出会ったのかどうか、とにかく彼女は一頭の犬を連れて帰ってきた。本当は二頭連れてこようと思ったのらしいが、それは無理だと判断して。
コイタロウって猫もいるし。
除染とかなんとかもあったらしい。とにかくその犬の生活圏は郡山になった。
彼女はその犬に「ヒロシ君」という名前を付けた。
真新しい首輪に真新しいリード。ヒロシ君はご近所への「引っ越し挨拶」に回った。
たぶん、ラブラドールか芝のミックス。
自分が「ヒロシ君」という名前の自覚があるのかどうか。
でも、名前を呼ぶと傍に来て「ヨロシク」と言わんばかりに尻尾を振って挨拶してくれた。足や手の匂いもかがれた。
保健所にも行き、彼はりっぱに郡山に住民登録を済ませた。
ボクハはヒロシ君と仲良しになった。
犬が介在すると人間同士の会話もはずむ。
ナオミさんは郡山にいるときは毎日ヒロシ君と散歩に出る。彼が南相馬でどういう環境にいたのかはわからないが、もともとの「戸籍上」の名前もわからないが、散歩が大好きのようだ。
散歩はナオミさんにとっても好都合・・・。お互いに「健康維持」をはかっている。
ナオミさんが出張などで県外に行くときは、彼女の実家がある二本松に行く。そこがまた、田園風景豊かなところらしい。
ヒロシ君は両方の家を気に入っているようだ。
「ヒロシ君、よかったね、いいお母さんと会えて。辛い思いをしている子だってたくさんいるはずだから」。そう話しかけてみた。
何かを感じたか、わかってくれたのか。その時だけは尻尾を下げて、悲しそうな表情になったような気がした。そう思えた。
当時何歳だったのだろう。
あれから3年、居住地を替えて3年・・・。
ヒロシ君が何を思っているのか。知りたいような知らないほうがいいような。
どうも最近は、彼は、ボクの相手をするより、早く散歩にいこうよとリードを引っ張っている。この場所が気に入ったのかもしれない。
今夜は「ヒロシ君」誕生の日だ。
ナオミさんの家では、猫も交えた大パーティーが行われるのかもしれない。
ヒロシ君のことを書きながら、鎖でつながれたままだった飯舘の太陽クンのことを思う。
行き場の無くなった牛たちを集めて面倒を見ている浪江の希望の牧場のことを思う。
牛を手放して、殺処分に出して、自ら、命を絶った畜産農家の人のことを思う。
保健所などに収容された犬や猫がどうかったのかを思う。
動物たちが実は一番の被害者だったのではないかとも思う。
シェルターに暮らしている犬を、引き取ろうと考えていた。ヒロシ君が来たのと同じころ。でも、どうやってもうまくマッチングがかなわなかった。
今でも悔やまれていることの一つ・・・。
今、テレビでは被災犬のことは話題にもならない。タレントの犬自慢のはなしばかりが目につく・・・。
2014年4月21日月曜日
“チェルノブイリ”異聞
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