大津波は人も家も持ち去った。街を崩した。ガレキだけを残して。
突然出現した廃墟。
大地震、大津波をもたらした自然とは。悪魔なのか。脅威なのか。脅威だ。
何もかもがなくなった廃墟。人々の営みを一瞬にしてうばった化け物の津波。
津波は何をしに来たのだろう。人間を不幸にさせ、塗炭の苦しみを味あわせるためにか。
根こそぎ壊して、壊して、廃墟にした津波。自然の災禍。その津波はすべてのものを持ち去ったわけではなかった。忘れ物をした。大地に。
きのう母の日。瓦礫のあいだから可憐な花が顔を出していた。大地は、海に犯された大地が、人間に贈り物をくれた。瓦礫の間だから顔を出したカーネーション。人がまいた種までは奪えなかったのか。
テレビの画面に映る赤いカーネーション。白いカーネーション。花は悲しみにうちひしがれた人に笑顔を与えた。ある人は一輪、避難所に飾り。ある人は白い花を海に手向けた。
「花を見たら生きて行こうという思いにとらわれました」。一輪の花が人に勇気と希望を与えた。
大地の恵み。花一輪が、どんな人の言葉よりも心に届いた。そう見えた。
自然の脅威におののきながら、自然の強さを感じている。大地の、自然の恵みという言葉を実感している。
郡山の街にも市のシンボルの花、花かつみに似た白い花の木々が目をなごませてくれている。
2011年5月9日月曜日
“チェルノブイリ”異聞
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