ちなみに、辞書を引いてみる。地元。
「その事に直接関係ある土地、本拠地」とある。「自分の居住する、また勢力範囲である地域」とある。最新の岩波国語辞典。
その通りだが、これだけでは、人々の心の、意識の中にある「地元」という言葉の定義にはならない。いや、それは“定義無き概念”かとも。“概念無き定義”かとも。
地元の反対語は何か。多分誰も答えられない。
福島県には二つの新聞がある。福島民報と福島民友。双方、地元紙という。自他共に。本社が福島県にあり、福島県民が購読者だから。本拠地があり、勢力範囲である地域・・・。
その反対語は中央紙と呼ぶのか全国紙と呼ぶのか。時として、その全国紙の方が、より“地元”に接近した記事を書いている場合もある。
仙台に本拠地を置く河北新報。その新聞は東北6県に読まれている。福島の出来事を、地元紙より詳しく、あるいは、ネタを発掘して書いている。それは福島にとっては地元紙では無いのか。
「あれはブロック紙だ」。業界はうまい表現を使う。
地元局という。民放テレビ4局。それは独立した局ではない。東京のキー局の、いわば“出先”。地方のニュースの収集元。
東京のテレビ局に居た時に、ボクがなんとなく抱いていた概念。
「あれは地元の人じゃないから」。「ボクは地元じゃないから」。そんな言葉が飛び交う時、その根底にあるのは・・・。辞書には“自分の居住する”ってあるのに。
原発事故。原発再稼働。原発をめぐる「地元」という定義はもっと複雑だ。
例えば政府が何かを決める。「これに対して地元の反応は・・」と来る。
その地元とは。福島県全体を指すのか。避難させられている立地地域を指すのか、放射能被害を被っている、立地地域ではない村を指すのか。
「立地地元」があり、「被害地元」がある。
そのことに直接関係がある土地。福島原発の電力を消費していたのは首都圏。直接の濃い関係。彼らをなんと呼べばいいのか。
そう、それは「消費地元」なのだ。
そして、この三つの地元は、えてして、「対立の構図」とされてしまう。
消費地元の中心では毎週、数はともかく大飯原発再稼働反対のデモが行われている。今は、そのスローガンも変わったようだが。再稼働が既成事実になって以降。
そのデモを全国紙が取り上げ始めた頃、地元の新聞も「変わらねば」と言ったという。
原発を持っている地元。再稼働してない原発を持っている地元。
3・11後に出来た「被災3県」という“地元”。
定義の定まらぬ「地元」とは・・・。そして、地元という言葉で区別される人間の意識。せめて「地元」という言葉や概念が、ある意味、「差別の概念」につながっていかないことを願うのだが。
単なる屁理屈、言葉遊びだったのかな。きょうのからから亭の親父の言辞は。
地産地消という言葉がはやった。地産地食とも言った。この「地」は地元の「地」。それは「身土不二」をも意味していたのだが。その看板が消えている福島の実情。
はい、私は好んで地元の野菜を、米を、食品を食べています。求めていますが。
2012年9月4日火曜日
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