2013年6月10日月曜日

「北風と太陽」

以前も引用した。イソップ寓話。たしか東電の対応を巡ってのことだったような覚えがある。

先週末、テレビをいや新聞も大きく話題にした、ワールドカップ出場を決めたサッカーの試合後の渋谷で見られた「DJポリス」の話し。

テレビやネットでみたけれど、なかなかたいしたもんだ。若者を「掴んで」しまったのだから。彼の語り、口調があの“広場”の空気を一変させた。

その映像を見ながら思ったイソップの寓話。北風と太陽。イソップ寓話の比喩。
物事に対して厳罰で臨む態度と寛容に対応する態度の対比。

あの“おまわりさん”自身も言っている。お巡りさんは「怖い」。それを認めた上で言っているから面白い。「怖い顔をして立っているお巡りさんも、実は、皆、Wカップ出場を喜んでいるんですよ」。

怖い顔をした奴が一転優しい顔になる、口調になる。人はそれだけで、その人達を“許す”。

普段無口な奴が、全く笑ったこともないような奴が、なんかの拍子で笑うと「あいつが笑った」と、普段は毛嫌いしていた人達もその人を認め、人気者にまでする。

その20代の若いお巡りさんの名調子を聞きながら、ふと思ってしまった。

サッカーの後。あの渋谷は、さながらカルチェラタンのような“解放区”になるはずだった。若者がエネルギーを爆発させる場所だったはず。

なぜ警視庁は、大がかりな規制を敷き、若者を封じ込めたのか。暴動騒ぎが起き、逮捕者が出て、けが人も出て、近所の商店街が壊される。それだけはどうしても避けなければならなかった。そんな映像が世界に流されることを。

なぜか。東京都知事の指示があったのだと推測する。自分がトルコの国民のデモを俎上に乗せ、オリンピックに相応しくないという“失言”をして、世の顰蹙をかっていたから。安心、安全な都市、東京を“発信”しなければならなかったから。

あの日の渋谷の光景。それを「ソフト警備」だという。マスコミもそう言う。
官邸前で繰り返されている原発反対デモにも警視庁は「ソフト警備」なるもので対応している。

力で抑えつけようとすると必ず反動がある。警視庁は、「ただいま太陽運動中」ってことなのだ。官邸前や国会周辺、霞が関の“デモ”を力で鎮圧しようとすればどうなるか。わかっているから。

東京オリンピック開催地に相応しくないとされるから。

怖いと思っている、常に対峙する相手と思っている陣営が、「優しさ」や「面白さ」を前面に出してきたら、“闘う相手”が見つからなくなる。

あの若い警察官の呼びかけ、語りかけが、興奮する若者たちを鎮めたとすれば、やはりたいした人なのだ。それこそ「リーダー」に相応しいような。

この事務所の近所の交差点でも、よく警察官が隠れるように立っている。軽微な“違反”を摘発するために。皆、怖い顔をしている。「おい、ないやってるだい、閑そうだね」。車を止めて一言かけて行く・・・。怖い顔でボクを睨んでいるけど。あまりかまうと「公務執行妨害」なんて言われかねないから、軽くからかう。

安保闘争時、時々行った国会周辺のデモ。怖かった。鬼の4機は。どれだけ殴られたことか。あの頃、特にどのセクトにも加わっていない、いわばノンポリ学生はゲバ棒も持たず、殴られ放題・・・。

それから数年後、国会周辺が仕事場になったボクは、あの南通用門を眺めながら複雑な心境になっていたことを思い出す。

東電にもっと危機管理能力があり、“ケンモホロロ”の対応を被害者にシテいなければ、東電にたいするイメージも変わっていたかもしれないのに。
今でも東電の対応は「北風モード」だ。

報道によれば、あの渋谷の警察官は宮城県出身だとか。生まれただけなのか、生まれ育ったのか。定かではない。が、いかにも東北人らしい「和」の心を持っていた。

ピッチでは今野が宮城の星と言われ、ピッチ外では、宮城県出身のお巡りさんも宮城の星と言われるかもしれない。喋りに東北訛りは感じなかったけれど。

あらゆることに「意図」がある。権力は。


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