あの日から2年半。放射能という言葉を実感して2年半。苦しみ悩む人たちを見て2年半・・・。
こんな新聞記事があった。昨今問題にされている汚染水をめぐって。
「タンク付近から高い放射線量が検出された。毎時1,800ミリシーベルト」と。
1,800ミリシーベルトとはそれを4時間浴びると生命にかかわると。
その数字に驚愕する。
しかし、その記事の最後にはこうある。「だが、ほとんどが透過力の弱いベータ線、β―線なので比較的容易に防護できる」。
我々は、あの原発事故以来、それこそ連日のように、放射性物質だの、放射能だの、ヨウ素だの、セシウムだの、数々の「原子力用語」に接してきた。
「正しく測り正しく怖がる」。そんな“合言葉”の中で。
ベクレルだのシーベルトだのも聞いた、知った。かつては「キューリー」と言われていた“単位”。
そして、それらに対する“判断”の基準はすべてが“数字”で語られる。
空間線量、内部被ばく、外部被ばく。それらが「数字」の中に混在し、混同される。
数字が人々の不安を煽り、混乱を生じさせている。
東電の発表含め、計測された、検出された線量という数字が問題になる。
地面から1メートルのところでは例えば0、1マイクロシーベルトだったものが、線量計を地面に、雨樋の下に置いたら、0,3だったとか。
実例をもとに、実測データーをもとにいろいろ学んだが、結果数字だけだったのかもしれない。
半減期という言葉を、知識を、誰もが持ったが。
自然界にもともとある放射線と、原発事故による拡散された放射性物質のことも。
事故からおよそ2年半。汚染水問題で、またまた問題になった線量。除染の基準にされている線量・・・。
東電の会見は、まさに専門用語を駆使し、素人ではわからない放射性物質に関するやりとりが交わされている。
原子力の、核の、事故の、放射性物質の問題は、理解するのが難しい問題だ。
だから、報道機関の役割が必要になる。キュレーターだ。いってみれば難しい美術絵画を見に来た人にわかりやすく解説する学芸員のような。
少なくとも、放射性物質にはα、アルファ線があり、β―、ベーター線があり、γ、ガンマー線があり、X、エックス線があり、それぞれがどんな“能力”を持ち、どんな作用をして、どんな影響を与えるかなどの。
ストロンチウムならどうで、トリチウムなどならどうでと言った具合の。
詳細な、分かり易い伝え方。それが求められている。空間線量は何線で、地表に付着しているのは何線でといったことも含めて。
それらの事をきちんと伝えないから、伝えることをしないから、いや、もしかしたらわかっていないのかもしれない。
病院でエックス線検査を忌避するといったおかしな現象も生む。
ラドン温泉を愛用している人が止める。
言い訳程度に記事の末尾で、β―線なので透過力が弱く、比較的容易に防護できるなんて書いているくせに。
見出しに踊るのは、何千ミリシーベルト。その数字の推移、比較だけ。
その何千ミリシーベルトの“内容”を大きくはっきり書かない限り、伝えない限り、「正しい原子力災害報道」とは言えない。
1800ミリシーベルトという数字だけが、「福島」に対して向けられる。それを跳ね返すような論理的根拠を福島県民の多くも持ち得ない。
そういう意味での正確な、分かり易い報道。それが一番望まれているはずなのに。
年間被曝線量、1ミリシーベルトは毎時換算0,23μシーベルトだということは、せめて浸透してきていると思うのだが。
専門家なるものも、もっと心して解説にあたってくれねば。
見出しに踊る数字が「すべてを物語っている」という事では無いとうこと。
だから、我々も、メディアや学者に頼ってばかりいてはいけないということ。
「学ばねばいけない」という面倒な作業も受け入れなければということ。
「正しく測って正しく怖がる」。その“思想”、“スタンス”の中にはこういったことも包含されていると思うのだが。
ま、いいか。総理大臣さまが「汚染水は0,3平方キロの中にブロックされている」って数字あげて“宣言”したんだから。ごたくならべてもしょうがあんめぇか。
いや、違うな。あの日から起きていることすべてを「さすけね」って言葉で片付けるわけにはいかないのだ。
2013年9月11日水曜日
“チェルノブイリ”異聞
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