いわゆるALPS,多核種除去装置、汚染水浄化装置。不具合がみつかり運転停止、その後、運転は再開された。原因はゴムの破片がつまっていたことだとか。
作業員の確認ミス、人為的ミスとされている。
おかしなものだ。こと原発に関しては「人為的ミス」だとなると、どこかほっとする空気が流れるということ。人為的ミスなら治せると思ってしまうこと。装置本体の不具合ではないということ。
核を人間は制御できない。それを大声で今叫ぶつもりはない。しかし、その前提に立った思想があるから、なおさら人為的ミスに寛大になってしまうのでは。
一昨年の事故直後から、例えばベントの際の弁の開閉ミスや、今度の汚染水漏洩でも、栓の開閉が汚染水流出につながったなどと、「人」が原因とされてきた。
汚染水タンクの水漏れのボルトの締めもそうだ。
では、それらの人々を糾弾して事足れりということになるのだろうか。ならない。
事故現場では常時3,000人の人が働いているという。事故処理に。東電の社員もいるだろう。関連会社の作業員もいるだろう。単純作業には日雇いのような人たちもいるだろう。
彼らがどう殊遇されているのか。被爆の“恐怖”と隣り合わせの中で。過酷な環境の中で。
ブロックだ、コントロールだ、40年後廃炉だって言ったって、それをしているのは現場の人間。
それには作業内容にもよるが、原発に熟知した人たちが必要だ。熟練した人たちが必要だ。使い捨てのようなわけにはいかない。
極論すれば、この国の命運は、現場で働く人たちにかかっている。
現場の士気は著しく低下しているという。
「意味のない無駄な作業をしているのではないか」という思いが蔓延しているという。知っている人ほどそうだ。
辞めていく人が多いという。作業の過酷さ、作業員への無理解、東電というだけで、色眼鏡で見る視線・・・。
人がいなくなったら「廃炉」なんて覚束ない。いくら号令をかけられても。
彼らを支えていたのは“使命感”。それがズタズタにされて時、身を律するすべを持たない。
日本のサラリーマンの平均賃金、職種によって違うが、いわゆる大企業、そこには電気産業も含まれている。年収408万円。
原発で働いている人達に、いったいどれくらいの報酬が支払われているのか。各種の手当は・・・。
労働に対する正当な対価は支払われているのか。
やる気が起きない、賃金も低い。やってられないって思いは当然だ。
せめて、労働環境の整備と、高額な報酬は支払うべきなのだ。
内部留保も底を尽き、国からカネを融通してもらい、かろうじて持ちこたえている東電と言う会社。
再稼働への動きを増す。再稼働に当たっては、事故処理に当たっては、極力「コストカットに努めます。電気料金への転嫁は避けます」と会社は言う。
そのコストカットに現場の作業員への報酬も含まれてはいないのか。
一昨年の事故後、現場にとどまった人達は海外から「フクシマフィフティーズ」と称賛され、英雄と呼ばれた。英雄とは何か。「死」と隣合せにある英雄と言う存在。「死」を覚悟しての「英雄」。
5号機、6号機も廃炉にするという。そこから人は回せるのか・・・。廃炉にするためには人が必要なのだ。第二原発から人が回せるのか。
すべてのことの「人間」が必要なのだ。政治家が目標を言っても、そのための人がいなければ事は為されない。
被災3県の地方自治体職員には体調を崩し、休職する人が増えているという。
いわゆる“復興”なるものへの影響は大きい。
東電は来年4月に新入社員を採用するという。その人たちはどういう仕事に就くのか。
事故現場から収束のための人がいなくなる日・・・・。あり得ないことではない。愕然とする。それを思うと。
今から、そのための人材を育成することが必要なのだ。40年後、いや、それ以上になるだろうが。
それは国を挙げてのやらねばならぬこと。専門知識が、高度な知識が要求される仕事。
東電の社長は「目先のことに捉われていて手抜かりがあった」と吐露している。
しかし、今も目先のことで精いっぱいなのでは。40年後・・・。それがどのくらい真剣に検討されているのだろう。
人為的ミスは、またも繰り返されるはず。
2013年9月30日月曜日
“チェルノブイリ”異聞
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