日本が高度成長をまっしぐらにひた走っている時、次々とビルが建ち、建造物、構造物が建てられている時、その現場には、スローガンというか、標語というか、必ず「安全第一」という垂れ幕が掲げられていた。
安全。安らかで危険の無いこと。と辞書にはある。
道路標識は安全標識。交通安全運動。「秋の交通安全運動期間中なのに事故が起きた」とテレビは言う。安全を唱えていれば安全なのか。
都電が走っていた頃の東京。停留所は安全地帯。そこに車が突っ込んでみたり。
交通法規にある「安全運転義務違反」。
神社に行ってもらうお守り。家内安全・商売繁盛。
安全な食品、安全な水・・・。
安全と言う言葉と危険という言葉は裏腹。いや、表裏一体。安全のかげには必ず危険があるということ。
平和という言葉の裏には、それを「戦争」という手段で勝ち取ろうとするおおなる思想の矛盾が存在しているということ。
飛行機は安全な乗り物だと言われた。事故が多発した。繰り返し安全を心掛けますと釈明があった。
鉄道も安全な乗り物だと言われた。多くの悲惨な鉄道事故を目にしてきた。
JR北海道のレールの異常や車両の整備不良。数日で判明するその件数のネズミ算的倍数。
ただいま267か所とか。
釈明やお詫びの会見見ていて思う事。なんだい、原発事故と同じ構図じゃないかと。
本社と現場の意思疎通がうまくできていなかったとJR北海道の社長や幹部が言う。
報告だけを聞いている本社。それですべてを判断して経営にあたっている人達。
経営コンサルとか、経営者とか、社是にも掲げる「ホウレンソウ」。報告、連絡、相談。ポパイじゃあるまいし。
「すべての事は現場にある」。現場にどんな人たちが配置されていて、どれだけの能力を持っているか。判断力を持っているか。現場を本社がどれだけ信頼しているか。
原発事故と同様なのだ。安全神話に固められていた原発と。「まさか」に支配されていた原発と。
原発現場は立れ入れない。そこの様子は事故調にまで隠される。現場を語るのは本社の広報。シルトフェンスがかかり、スクリーニングされた情報。希釈された情報。
原発事故現場で使われている言葉の数々を、「情報」に当てはめてみれば分かり易いかも。皮肉なことなんだけど。
すべての事は現場にある。警察の捜査でもそれは基本。取材活動もそれが基本。
「現場を踏め」とよく言われたもんだ。
現場を取材した者が書いた原稿と、机の上だけで書かれた原稿の差異。発表だけ書いている紙面との差異。
絶対安全が標榜されていた原子力発電所。時々見学というか視察と言うか何回も行った福島第一原発。
あちこちに、たしかにあった「安全第一」の標語。その下で白装束に着かえを要求され、ヘルメットの着用を要求され、迷路を歩くたびに見かけた「危険、放射線管理区域、立ち入り禁止」の標識。
頭から足に至るまで「完全武装」の建屋構内。出入りの度に図る線量計。脱ぎ捨てて廃棄される白装束の全部。危険地帯にいるような錯覚。
そう、やはり、現場は安全地帯では無かったんだというあの頃に浮かんだ疑念の数々。
事故後、多くの人が「安全な地域」に避難した。避難した先が安全だったのか。
放射能汚染だけではない。その他の「危険」が待っている地域に。
国の安全は軍事力で守る。どうやって・・・。
安全という言葉の“まやかし”。そして安全と安心は違うということ。
危険が「リスク」という外来語に置き換えられて、それを皆が好んで使っているということ。
2013年9月25日水曜日
“チェルノブイリ”異聞
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