きょうから九月。いわば季節は秋。
関東大震災の日。二百十日。防災記念日・・・。
袋小路に入ったような、出口が見えないどころか、悪化する福島原発事故現場の汚染水・・・。
復興ってなんだろう・・・・あらためて考える。
「東日本大震災後、私たちが多用している“復興”の二文字。辞書には“いったん衰えたものが再びもとの盛んな状態に返ること”とある。しかし、本当にそれだけだろうか。建物や道路を元に戻し、元の家、元の町で暮らせるようにすることか。人の“心”はどうだろう。一人一人が考える“復興”は違う。だからこそ、人の話を聞き、その人が抱えている悩みや、求めていることを汲み取っていくことが大切だ。
震災から2年が過ぎ、生活が落ち着いてきている人も少なくない。だが、そんなといきこそ、“心の復興”が必要なのではないか。今、隣にいる人の話を聞くだけでいい。話を聞こう。人の心を知ろうという姿勢が人の心をつなげ、本当の“復興”への第一歩になる」。
これは僕が書いたものではない。しかし、同じような趣旨のことを言ってきたし、書いてきた。
これは福島県内の高校生が書いたもの。僕が書いたものを凌駕している。
「浪江新聞」という新聞がある。タブロイド版にも満たない小さな新聞。
福島県内の高校生・中学生が編集している新聞。その新聞の、朝日新聞で言えば、天声人語、毎日で言えば余禄にあたるコラム欄。そこにあった磐城高校の生徒の文章。
7月25日発行の新聞のトップ記事の見出し。
「一人ひとりの暮らしを取り戻す。被災町の奮闘」。高校生が二本松市にある浪江町の役場を訪ね、取材して書いた記事。相馬高校生。
リードにはこうある。「浪江町は“復興”する困難さに直面している」と。
「浪江町では応援の職員も含め、300人が復興に携わっている。浪江町では一人ひとりの暮らしを取り戻すために、個々の悩み事や考え方に沿った選択肢をつくることを考えているそうだ。(中略)こうした取り組みの元にあるのが浪江町の、土地を元に戻して発展させることが復興ではなく、場所にかかわらず個々が再び幸せな生活を送るようになることを復興と捉える考え方だ」。
そして役場の職員のインタビューも載せる。その見出し。
「復興」と「対立」 複雑に絡む課題。
そして、中学生は「二本松で再出発 浪江の味元気届ける」と浪江焼きそば店主をインタビュー。店主から「浪江焼きそばで皆に元気をあげたい。大事にしていることはお客さんに喜んでもらえることだ」という話を引き出す。
その店のこだわりは鉄板でなく、中華鍋で焼きそばを作ることだ。との“秘伝”も。
新聞の題字の下には6人の子供たちの写真が載っている。
岳陽中学、鏡石中学、郡山ザベリオ中学、福島大付属中学、そして、磐城高校、相馬高校。
ボクは中学・高校とも新聞部に所属していた。学校新聞は月に一回発行。中学は謄写版印刷。高校は活版。
何を書いていたかは定かに出来ない。しかし、おそらくこんな記事やコラムは書けなかったろう。書いてはいない。しかりとした視点をともなった論調のものを。
子供たちに教わる一つの例。震災が、原発事故があったから、成長出来た子供たちの例。
福島の子供たちは、自分たちが何をやればいいのかを、しっかり考えている。
おろおろする大人を尻目に、立ち位置をきちんと捉えている。
彼らも、この編集に携わっている6人も、得難い体験をした。その体験を生かすすべを学んだ。
やがて大学を出るだろう。中央紙でもいい、県紙でもいい。新聞記者になってくれ。
君らが本職の記者になった時、君らの書く記事は、今の新聞に載っている記事とは絶対違うものになるはず。取材の仕方も違うものになっているはず。
君らの「視点」は常に「人に向いている」から。
2013年9月1日日曜日
“チェルノブイリ”異聞
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