2013年9月6日金曜日

「東電叩き」が政治ではない

「もう東電には任せておけない。国が前に出る」。そう言って大見得を切る政権。

形は違うが2年半前の民主党政権と同じではないのか。

今更繰り返すのもなんだが、東電とは国策会社である。戦後、いや、戦前も数多くあった国策会社。隠れ蓑のような会社。
前身の東京電燈、国の管理下にあった日本発送電株式会社。

まして原子力発電は、国策そのものだ。外圧を受け、国が全面的にバックアップし、法整備をして出来た原子力発電所。

あの大事故を起こした時、枝野の「直ちに」「いまのところ」から始まり、避難指示命令も出されず、遅れ・・・。
菅直人はただひたすら東電を怒鳴りつけ。

危機管理能力皆無だった政府。沈黙する官僚。役立たずの保安院。かたや危険危険を煽る学者、かたや安全安全をテレビでいう専門家たち。

「この国は終わった」。何回もそう書いた。あの時・・・。

東電を擁護しているわけでは決して無い。

国とは、政府とはという国家の大命題だ。国民を守れなくてなんの政府かと。

国があるから人がいるのではない。人がいるから国が出来たのだ。律令国家を引き合いに出すまでもなく。

国が前面に出る。それはカネを出して済むことではない。

“喫緊”と自らが言ったように、汚染水の問題をどう解決するのか。
士気が著しく低下している現場の作業員を、どう守るのか。

法整備含めてやることはないのか。
頭を低くして、国際社会に知見を求めることはしないのか。

何よりも優先すべき課題なのだ。

東電を叩き、東電だけを悪者に仕立てていると、それは、いつか、ブーメランのように政権にも跳ね返ってくると。

国民はもはや、国に懐柔されて愚かな民ではないということ。

菅政権が、あんな末路をたどり、民主党政権が今の体たらくに陥ったこと。
その大きな原因は菅政権がよってたかって東電を責め、あらゆることの責任を、東電に押しつけ、押しつけ先の東電に実質カネの援助をし続けたため。
それがわからないのか。

前轍を踏むのか。政権が誰の政権だってかまわない。今の福島の現状をどうにかしてほしいだけなのだ。

菅の振る舞いを、今の政権も“みならって”いるかのような。

なんでも他人のせいにする。そんな一番卑怯なふるまいをしたことに対して国民は、選挙と言う“温和”な方法で鉄槌を下したのだ。民主党へ。

そして、前面に出ると宣言した今・・・。

「お詫び」だけは東電にやらせている。さすがに漁師も怒る。「なんで政治家や政府の人はこないのだ」と。
嫌な役回りだけは東電に押しつけ、いいとこどりを目論んでいるかのような。

カネは出すが知見は持たない。格好つけるが現地には行かない。官僚だけを間に合わせのような、実績作りのように“常駐”させるという、いわば兵士だけ前線に向かわせ、後ろで掛け声だけをかけ、強権だけを振り回す。


メディアも東電叩きに奔走する。いくら叩いても“反撃”は無いから。

余談だが・・。ツイッターに誰かがリツイートしていた記事。自称ジャーナリスト(ジャーナリストなんて皆自称だけど。勝手に名乗っているだけだけど)、石井孝明という人がアゴラに寄稿したという論文。

汚染水問題、健康被害の可能性なし。

図表を駆使しての結論。「現在の海洋汚染は深刻なものではない。放射性物質の海水の濃度は、1960年代の核実験が繰り返された時期より少なく、飲料水の放射性物質の基準値より低いところが大半だ。警戒はすべきだが、健康を懸念して騒ぐ必要はない」。
「この問題で、“いつものように”、放射能への恐怖を強調して騒ぐ“ノイジーマイノリティー”がいる。オリンピック招致で汚染水が話題になっているという。こうした騒ぎが“こだま”のように、世界に広がってしまったのだろう。とても残念だ。東京オリンピックの実現を願うものとして、騒ぐ人には黙って欲しい」。

ばかやろ~だ。彼が挙げている海水の汚染の線量は、誰だって知っている。バカにするな。

沿岸の漁師だってもちろん知っている。ノイジマイノリティーではない。もしその言葉を当てはめるなら風評を撒き散らしている奴らだ。
そして、この汚染水問題が事故直後からわかっていたにも関わらず、手をこまねいていた奴らだ。

ジャーナリストを自称するなら、もっと俯瞰して物を見ろよ。もはや提供される「数字」さえ、それがまともな機関の調査結果でさえ信じていいものかどうか疑う「不信のるつぼ」に追い込んだのは誰だ。

ま、こんなバカにかまっていても仕方ないが・・・。

韓国は水産物の輸入を禁止する措置を取った。東北沿岸の漁師たちの生業は絶たれる。

すべては「こころの汚染」に端を発している。

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