我々は二つの時計を持ってしまったようだ。
止まったままの時計と高速で過ぎ行く時計と。
11日。3年7か月。午後2時46分。「あの日」以来、脳内時計を止めてしまった、止められて人が、物理的に止まった時計、2時46分を指したままの時計を見つめていたかもしれない。
沈黙が支配する中で・・・。
現実に止まったままの時計は、誰かがモニュメントとして置いたのではなく、致し方なく、その場に置かれている。
そして、世の中は3年半と言う時を刻んだ。
動いている時計は、何かが進んでいるように感じさせる。
では、何が一体進んだのか・・・。
忘れるという行為は進んでいる。忘れようとする意志も進んでいる。
3歳と7か月、歳をとった。その分、体力も衰えた。思考力も衰えた。しかし、たまった澱のように、かたまったまままの感情が残っている。
そして、3年7か月という時間は、あまりにも多くのものを、考えねばならないことどもを、持ち込んできてくれている。
もはや、消化不良のように・・・。
緊急地震速報の音で、また時間が後戻りされてような、あの日を思い出すような感覚が呼び覚まされた。
御嶽山の噴火から2週間。あっと言う間の時間。まだ不明者が残っている。懸命の、まさに命がけともいえる捜索が続く。
台風19号が接近している。本土に。
沖縄の東大東島では、風雨が荒れ狂っていると報道される。
交通が遮断されて久しいという。
島の商店からは食糧が無くなった。商品の無い棚をテレビは移す。
「明日からどうして食べるのか」と住民は嘆く。
あの日の後の光景が重なる。食糧が無くなった、ガソリンが無くなったあの数日間、数週間を思い出す。
時計は進んだ。時にはそれが後戻りもしてくれる。
そして・・・。止まったままの時計がある光景。
「沈黙」という行為や意思を持ってしか、それを受けとめる以外に無いのか。
そこから60キロ離れたところでも、街は「饒舌」が支配している。イベント会場からはマイクに乗った大音量の声が聞こえる。
選挙カーも走っている。
250キロ離れたところでは、あらゆることが「饒舌」だ。
そして、あらゆることに、スピードという速さが求められている。
そう、「スピード」は「立ち止まって考える」という人間の思考形態まで奪ってしまったような。
スーパー台風なるものは、すでに列島各地に被害をもたらしている。
この東北の地も伺うという。
無防備な空き家は、それに耐えうるのか。
何よりも原発事故現場は、いかなる影響を受けるのか。
僕の中の「時計」は空回りをしているようだ・・・。
2014年10月11日土曜日
“チェルノブイリ”異聞
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