「革命」なんて言うと、なにやら大仰のようにとられるかもしれないが、本の題名である。「民度革命のすすめ」。
北京大学と精華大学の教授をつとめる紺野大介さんという人が書いた本。
この本はおととしの11月11日。大震災から8か月後に出版されている。
橋本左内が15歳の時に書いたといわれる「啓発録」を幹に据え、吉田松陰の遺書「留魂録」を引くなどして、日本人の精神性や価値観を問うた本だ。
その本の前書きに著者はこう記している。
「201年3月11日、東日本大震災と巨大津波の発生、それに連動した東京電力福島原子力発電所の大事故と放射線災害、いわば、太平洋戦争以降の最大の国難に遭遇している。しかし、こうした国難以前から、日本は人口減少と少子高齢化、人件費や税負担の企業環境悪化。870兆円もの国債残高を抱えているという財政悪化と信用力の低下。生活保護世帯の増加とともに、ワーキングプアの出現など、日本人の内向き志向とリスク回避志向等々。
これらのエートス(簡単に習性、性格と訳しておく)はどこから来るのか。誰がこのような国にしたのか。それは、国家を率い、国民を導く政治リーダーが我が国に存在していないことの証明であり、そうしたリーダーを国民も選出出来ていない現状にある。とりもなおさず国民全体の民度が限りなく低落した結果といえるだろう」と。
そこから、先人を引いて、民度革命のすすめという言葉が導き出されてくるのだが。
参院選が終わった。国民の、いや、有権者の50%強の民度は、リーダーとしての安倍自民党を選択した。
ひとえに、そのリーダーがこれから何を為していくかに命運がかかっている。
それを選んだ、民度が試される。
原発被災県である福島県民は、再稼働を公約とする自民党候補に軍配をあげた。
県内どの市町村でも、自民党が第1位の得票。
もろ手をあげて自民党を選択したのか。そこに福島県民の“苦悩”がある。15万人の避難民。彼らも投票所に行った。そして自民党を、悩みながらも選択した。
“ねじれ”を解消すれば少しでも、事態の解決に向かうのではないかという選択。
そして選挙区では自民党に入れ、比例区では原発再稼働に消極的な政党に票をいれた。反対と唱える政党にも。
“復興”のためには強力なリーダーが・・・と考えたのだろう。
しかし自民党を無条件で支持しているわけではないという逡巡が、比例区では他党へと言う「投票行動の“ねじれ”」を起こしていた。
福島県民の選択に、期待に、安倍自民党が応えるのや否や。
東京選挙区では、声高に「反原発」を言い募る候補者二人も当選させた。もし、その人たちが福島県から出ていたのなら、当然、当選はおぼつかない。
東京都民と福島県民に「民度差」なるものが存在するのか。
沖縄県民は米軍基地の県外移転を言い続ける候補者を当選させた。自民党ではなく。
ならば、沖縄と福島に民度差はあるのか。
自民党を選んだ福島県民を責める人がいるかもしれない。原発被害を証明出来るのは福島県民以外にはないのだから。
「消極的な自民党選択」と言えるかもしれない。避難生活をしている人たちにとっては、「明日」、「あと半年」、「あと1年」が大事なのだ。
それを苦悩の末に自民党に託したのだと。
「民度革命」という本の題名を借りて言いたいのは、本当は投票率のこと。
福島県も低かったが。
それは、あすに譲る。寝不足の頭は、けだるさを伴い、指は止まりそうだし、頭はこれ以上働かないから。
天皇皇后両陛下は、今日と明日、福島に滞在する。飯舘村を訪れ、川俣町を訪れ、その他の地域にも。居住制限区域になっているところにも行かれるという・・・。